ストローク感でクルマと対話したいならC3とフィアット500
そしてワインディングへ。このシチュエーションでも私は雰囲気にこだわって注目したいと思っていた。が、それぞれどうして、運転好きの方でもコミュニケーションが楽しくて頼もしいモデルが多かったのだ。
もっとも雰囲気が良かったのはC3。何と言ってもフロントウインドウが頭上まで広げられ、視界180度のパノラマ感は他にはない。木々の間を抜けるような道路、それを抜けて広がる青空、視界いっぱいに広がる富士山、etc……。仮にスポーツドライビングがお好みの方でもこのシェイドをめいっぱい開けたら、戦意喪失するはず。
シトロエンのモデルはそもそもサスペンションストロークが大きく、それが十分なボディ剛性を活かししなやかなコーナリング性能を生み出す。これがMTならまた印象は異なるのだが、1.2リッター+5速ETGの組み合わせではスッキリ&シャッキリというよりも、一筆書きの要領でコーナーをライントレースするのが気持ち良いモデルだ。
ストローク系のもう1台がフィアット500。雰囲気重視のクルマだと思うなかれ! タイトコーナーなどではしっかりとボディが沈み込み、そして粘る、よく粘る。乗り心地も良い上にコーナーでもこの頼もしさがあれば、郊外にもますます連れ出したくなるというものだ。
実用性能がしっかりと備わるup!は、ここでもスマートなコーナリングをしてくれた。じつは6台中、もっとも線の細さを感じたup!はタイヤサイズのせいもあると思う。が、コーナーやそれこそ街中の交差点でも、ハンドルを切って曲がる際にはボディ骨格のしっかり感がバランスよくタイヤに載るようで、まったく不安を抱くことがないばかりか、軽快さすら感じられるほどだ。
前述したように、up!と若干ドライブフィールの印象が似ていたトゥインゴは、フォルクスワーゲンの硬質さより乗り味が優しい。しかしトゥインゴはRR。フロントノーズがスイスイと入り、軽快そのもの。
新型にしてこれだけの仕上がりを実感できるのは、ドライブフィールの統一ぶりにもある。アクセルペダルを踏み込んだ際に欲しい力が得られるのはもちろんだが、その軽すぎない適度な軽さとステアリングの操舵感、クルマの動きに一貫性が感じられるからより気持ちがいいのだ。
スマートはシーンを選ばず骨太さが感じられ、ステアリングフィールも重め。そして足まわりもハード系だ。結果、安定感も十分なパフォーマンスは申し分ないが、乗り心地も一貫してやや硬い。
スマートのほうが太いタイヤでも履いているのではないかと思うほどドッシリとしていたのだが、実際はトゥインゴと同じタイヤサイズだった。同じ構造を持つも、クルマづくりの違いは明らか。だから楽しいのだ。
ミニもドライブシーンが変わっても印象は変わらない。エンジンはこのボディサイズとしては十分に頼もしい余裕があり、ボディの重厚感を走り出しから感じられる。
さらにコーナーではやや硬めの足もとがミニをフラットな姿勢に保ったまま(実際にはサスペンションがしっかりと働いている)、しっかりと曲がりスムースに再加速へと繋げてくれるのだ。
ただ女性にとっては少々ハンドルが重く、郊外の荒れた路面では少し跳ねる場面もあった。エンジン音がもっとも大きく室内に侵入してきたのはミニだった。が、音もハードな印象も「ローラーコースター的」なミニの味としてはアリだと思う。
(写真:森山良雄)