スポーツカーはレーシングカーとは違い必ずしも速さが重要ではない
ここまで説明すればわかるとおり、じつはスポーツカーとレーシングカーは、思っているほど共通項はない。
第一に、スポーツカーはレーシングカーと違って、物理的な速さは必ずしも必要ではないのだ。例えばロードスターなどは、131馬力しかないが、スポーツカーとしての純度は極めて高い。
スポーツカーは、速くなくても「速そう」であればOKで、軽快感が命。逆にいえば、最高速が300km/h以上でも、筑波サーキットのタイムが1分以内でも、動きが鈍ければアウト。
以下同様に、生理的な違和感があっても、まったくワクワク・ドキドキしなくても、どんなにカッコ悪くても、レーシングカーはライバルよりコンマ1秒でも速ければ、文句なしの名車と言える。シーズン終了後、たった1年でレーシングカーとしての価値がなくなっても、まったく問題がないというのがレーシングカー。
それに対し、ホンモノのスポーツカーは、製造中止から10年、20年たっても愛され続けるクルマがほとんど。そういう意味で、スポーツカーの設計は、自動車エンジニアとして、もっとも難しい仕事のひとつで、同時に一番設計し甲斐のあるクルマに違いない。