北米市場で日系ブランド車が消えることはないだろう
アメリカでドナルド・トランプ大統領が就任しました。そうそうにTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)からの脱退を表明しました。さらに日米間の自動車販売における格差についても指摘したということです。日本のメーカーはアメリカで大量に売っているのに、日本がアメリカ車を買わないのはけしからん、というわけです。
もっとも、アメリカで売られている日系ブランドのクルマというのは、大半がアメリカ産なのは知られているところ。仮に日本からの輸出を制限したとしても、アメリカから日系ブランドのクルマが消えるということはない話でしょう。たとえばホンダの数値でいえば、日本国内よりアメリカの生産規模のほうが大きいくらいなのです。NSXもアメリカで作られ、そこから世界に届けられているほどです。
ただし、北米という括りで見ると、カナダやメキシコに生産工場を置いているメーカーは少なくなく、トランプ大統領が「アメリカ合衆国内産」にこだわり、なんらかのアクションを起こすと戦略の見直しを迫られるケースも出てくるかもしれません。
一方、日本でアメリカ車が売れていないという話の対応ですが、これはアメリカ系メーカーが日本で売りたいと考えるかどうか、がまず重要。単純にクルマを船で運んでくれば売れるというものではなく、販売のためには現地法人やディーラー網の整備が必要です。
すでに2016年でフォードは完全撤退していますから、あらためて販売網を整備するとは考えられません。それこそ無駄なコストになってしまいます。
また、1990年代に日本メーカーの販売網でアメリカ産のクルマを販売したこともありますが、その結果を考えれば、一時しのぎにしかならないといえます。もっとも、大統領が拳を振り上げたとしたら、そうした対応により落としどころを見つける必要があるのかもしれませんが……。
いずれにしても、貿易不均衡の話になったときに日系ブランドのクルマが槍玉に挙げるのは、それらがアメリカ市場で存在感があることの裏返しといえるでしょう。