コーナリングを楽しめる完成度の高い足まわり
操作的にはゆったりだが、コーナリングでの気持ちよさは格別。けっして硬い足ではないが、ダンパーによってロールスピードやノーズダイブが適度に押さえられ、すべての挙動変化が滑らかに行われる。
小さいクルマにありがちなヒョコヒョコとした動きがないのだ。正直、このサイズのコンパクトカーでこれだけ懐の深い動きをするとは驚いた。
一方、高速道路は不満のないレベル。100km/h付近の追い越し加速はさすがに0.9リッターターボのようなグイッと押し出される力強さはないものの、NAの軽自動車のような必死感もない。直進安定性も上出来で、ステアリングの微修正に神経を使わなくても大丈夫だ。
さて、このトゥインゴのMTモデルに乗り、クルマの正常進化とはこのようなものを指すのだろう、と思わされた。そこにあるのはクルマとドライバーとの対話、協調。そしてその先に楽しさがあるのだ。
ご存じのとおり古いクルマは気むずかしい。陳腐な表現だが、「クルマの声を聞いて」アクセルを踏み、クラッチを踏み、シフトレバーを操作しなければ上手に走らせることができないが、それができると喜びに繋がる。トゥインゴにはもちろんそうした気むずかしさはない。
しかし、レーシングドライバーのように特別な技能をもたずとも、しっかり対話して操作するとクルマが一体感を味わわせてくれるのだ。それは、取り立てて特徴のない、普通のエンジン、普通のトランスミッションだが、足まわりやボディがしっかりと作り込まれているから可能になる。
誰もが一体感を楽しめる要素をもち、それでいて、対話に失敗したときに機械がスネる心配を取り払っているから、正常進化と感じたわけだ。今どきの、ドライバーによる多少の操作の違いなど飲み込んでしまうようなクルマもいいが、こうしてゆっくり語り合えるクルマもまたいい。
今どき、171万円で、ガレージに置いておくこと自体が誇らしくなるような、個性溢れるデザインのクルマが買えることも嬉しい。
スポーティに走らせたいなら迷わず6速EDC+0.9リッターターボをオススメするが、熱くならずとも走りを楽しみたいユーザーは、トゥインゴ ゼン5速MTモデルを一考してほしい。きっとほかのコンパクトカーでは得られない喜びで満たされるハズだ。
試乗車装着オプション
インテリア
・スマートフォンクレードル
・フロアマット
・キッキングプレートセット
エクステリア
・フロントグリル バッジセット
・ボディ・デカール