タイプR用の新開発パーツは60点にも及ぶ
シャーシも徹底的にチューニングされ、ボディ各所の板厚を増してあるほか、パフォーマンスロッドも各部に追加。剛性アップ等のために25㎏の重量増があったにもかかわらず、トータルでは65kgの軽量化を達成している点にもホンダの本気度がうかがえる。
足回りも車高をベース車よりも15ミリ下げ、スプリング、ダンパー、スタビライザーをそれぞれ強化。ヘリカルLSDも標準装備となり、ダンパーマウントやエンジンマウントまで強化タイプに変更され、タイプRに新たに開発されたパーツの総数は、大小60点にも及ぶ。
内装にレカロシートやモモのステアリング、チタンシフトノブまで用意され、赤いホンダのエンブレムが、じつに誇らしげであった。これらは部品の共有化が命題の開発関係者にとっては異例のこと。
このDC2は、1998年に後期型の「98spec」が登場し、2001年まで生産され、4ドアモデルのDB8とともに人気を博し、他メーカーのスポーツモデルからインテRに乗り換える人も多かった。今でも、中古車の平均価格が100万円を下まわらない。
もうひとつ特筆できるのは、このDC2・DB8が、新車開発時から「タイプRありき」として誕生したのではなかったこと。
ホンダの社内で、「せっかくいいベース車(DC1)があるのだから、これにレーシングカーのテイストを盛り込んだ、ドライビングプレジャー溢れるホットなクルマを作ってしまおう」という流れが生まれ、まさに「メーカー純正のチューニングカー」という表現がぴったりのクルマ。
こうしたクルマは、今のクルマにはちょっと見当たらないし、これからも希少性は増すばかり。長く愛し続けられるように、ホンダには補修部品の製造廃止を行わないよう、強くお願いしたい1台だ。