「FFはアンダーステア」の常識を覆したシャープなコーナリング
インテグラタイプR(DC2)は、大げさでなくFFスポーツに革命を起こした1台だ。1995年に、3代目インテグラ(DC1)の派生モデルとしてタイプRがデビューしたとき、たまげたことを覚えている。「ホンダの本気」、「メーカーの本気」ってこれほどなのかと驚いたのだ。
「タイプR」というグレードはDC2がデビューする3年前、1992年にNSXが先行していたが、あっちは1045万円のフラッグシップモデル。インテグラベースで、どこまでタイプR化しているのかと思ったら、ベースモデルとはエライ違いようだった。
一番衝撃的だったのは、とにかくよく曲がること。それまでFFスポーツ=アンダーステアというのが定番だったのに対し、DC2はシャープに曲がる。下手な後輪駆動車よりもずっと気持ちよく曲がるセッティングになっていたので、FF嫌いな連中も思わずビックリ。
そしてエンジン。ベースのB18Cエンジンが、すでにリッター100馬力を達成している高性能エンジンだったのに、そのレブリミットを400回転上げて8400回転まで回し、圧縮比も10.6から11.1までアップ。ポートの段付き修正を手作業で行う(初期型)などの手を加え、NA(自然吸気)1.8リッターの市販車で、200馬力の大台に乗せてしまった。
カムカバーに赤の結晶塗装が施されたこのスペシャルなエンジンは、パワーだけでなく気持ちよさも抜群。1060㎏の軽量ボディと相まって、ターボ車にも引きをとらない動力性能を持っていた。