ターボがエコに効くのではなく領域を分けるコンセプトで燃費を向上
ターボがエコになったのではなく、エコがターボになったんです。いきなり禅問答のようで申し訳ありません。じつはこれ、ダウンサイジングターボのコンセプトそのものなんですね。
ダシンサイジングターボというのは、エンジンの排気量を小さくすることで高効率を狙いながら、ターボを付けることで動力性能を維持する、というものです。排気量が小さくなったことで気筒数が減れば、エンジン重量が軽くなるだけでなく、クルマのパッケージにも影響します。
それではターボ領域で燃費は高くなるのか? といえばそんなことはありません。やっぱりターボで多くの空気を与えて多くのエネルギーを出させると、そのロスも大きくなってしまい燃費は良くならないのです。つまり燃費を考えるならターボが効かない領域で走らせる必要があるんですね。
ターボは加速力が必要な時のエクストラパワーを得るための装置であり、もっといえば定常的にターボが効いてしまっていては燃費が悪くなって困ってしまうんです。
そのあたりの事情を反映しているのが、ダウンサイジングターボのパイオニアであるVWです。TSIは当初、ターボとスーパーチャージャーの2つのユニットを組み込み、低回転ではスーパーチャージャー、高回転ではターボが過給を担当していました。
高速になればなるほど駆動ロスが加速度的に増えていくスーパーチャージャーは、3500rpm以上でクラッチが切り離されるので、低回転に集中した高いギヤ比で駆動されます。これによってアイドリング直後から0.75barのブースト圧となり、これはR35GT-R初期モデルのブースト圧と同じです。ちなみにTSIのフルブーストはその2倍の1.5barでした。
雨の日などでホイールスピンなしの発進が難しいほどのトルクを出していたTSIは、やはり燃費がそれほど良くありませんでした。低い回転域から過給が掛かってしまい、燃料をたくさん消費してしまうのです。当時の2リッターより燃費は優れていましたが、驚くほどの燃費ではなかったのです。