ついに日本車が世界に並ぶ日が訪れた
日本の高級スポーツクーペが、世界に君臨するトップエンドのライバルたちと実力で肩を並べた。しかも「日本のレクサスここにあり」という個性を備えていた。ついに「日本の時代」がきた、きた、きたのだ。
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スペインの西部に位置する闘牛の街、フラメンコの本場として有名な、セビリアで行なわれたLC500初めての試乗会。世界中からジャーナリストが集められ、市街地からサーキットまで、5リッターV型8気筒NA(自然吸気)エンジン搭載のLC500と、3.5リッターV型6気筒エンジンにマルチステージ・ハイブリッドを組み合わせたLC500hの試乗会が開催された。
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正式発売は来年2月に予定されているので、今回のモデルはプロトタイプだ。しかし、限りなく市販モデルに近いという。
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映像でお届けしている清水和夫さんのインプレッションに、その仕上がりのすばらしさが凝縮されているが、僕の印象を少しお伝えしよう。
最初に乗ったのはハイブリッドのLC500hだ。世界初試乗に興奮しつつも、「おっ、乗り心地はいいし、トルクフル、いい感じだね」との思いを抱く。
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しかしよくよく考えると驚きだ。LCはランフラットタイヤを装着している。ランフラットはサイドウォールの剛性が高いため、乗り心地の面では厳しい、というのがこれまでの経験上でわかっている。しかしLCに乗り「乗り心地がいい」と感じていたのだから、素晴らしいできだということだ。
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続いて高速道路に上がる。制限速度は120㎞/hだが、追い越し車線では150㎞/h以上のクルマが多い。スペインはおおらかだが、注意しながら一気に加速。「こりゃ、異次元のスポーツカーフィールだ、凄い」と独り言。
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一般道では明らかにトルクが有り余るほどで、スタートダッシュはまるでV型10気筒クラスに乗っているほど気持ちよく加速する。それでいてNVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)と呼ばれる不快な音、振動は極めて少ない。これこそレクサスが世界に訴えたい新世代のハイブリッドだ。
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何しろ、全速度域にわたりエンジン回転を使い切るため、出力を4段階に制御する有段ギヤを組み合わせるという技を使った。10速に刻まれたCVT制御で全域をクロスレシオに設定している。
0-100㎞/h加速タイムはこれまでの5リッターV型8気筒エンジンを搭載するレクサス車種を上まわり、なんと5秒という俊足。Dレンジでもコーナリングに応じてブリッピングまでしてくれる人工知能シフトだ。
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「燃費を多少犠牲にしてでも、走りの気持ちよさに振りたい。ハイブリッド・システムをやっている大島(康嗣さん)とはずいぶんケンカしました(笑)」と、匠の称号を与えられたテストドライバーの伊藤好章さん。
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「結局チーフエンジニア(佐藤恒治さん)が、走りに振ろう、と結論を出してくれました」。HVシステム開発統括部の大島さんは、「走りに振りたいのはわかるけど、僕には燃費を向上させる使命もある。おかげでずいぶんトライ&エラーを繰り返しました」と笑う。
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その努力が、ハイパフォーマンスなハイブリッドカーを生んだ。清水和夫さんはサーキット試乗で「初めてドリフトができるハイブリッドだね」と真面目な顔をしてクルマを降りてきた。