DOHCは燃費にも貢献する技術
OHCというのは、オーバー・ヘッド・カムシャフトの略です。今度はバルブだけでなく、カムシャフトもエンジンヘッド側に配置されたわけです。高回転ではプッシュロッドという棒が正確性に問題があるので、プッシュロッドを排するためにカムシャフトをクランクケースからシリンダーヘッドに移動させた、というわけなのです。
当初はバルブを直接カム山で押す構造で、吸排気系がエンジンの同じ側にあるカウンターフローという方式でした。しかし吸排気効率を考えて、吸気系からエンジンを経て排気系という一方通行の流れが良いことが判ります。これをクロスフローと呼び、それを実現するためロッカーアームを介することになりました。
しかしロッカーアームを介する以上、いろいろな制約があります。その制約をなくして自由度を高めたのがDOHCなのです。吸気バルブと排気バルブが別々のカムシャフトで駆動されるので、トレンドとなっている可変バルブタイミング機構を組み込むことが可能で、それがパワーと燃費を両立させているのです。
バルブのはさみ角はハイパワーを狙えば大きくなりますが、燃焼室の表面積は大きくなるので効率は悪くなります。現代の高効率エンジン、ダウンサイジングターボではバルブのはさみ角は小さくなっていますが、それでもバルブ駆動系のシンプルさによって優位性があるのです。
昔は凄いものだったけど、今はごくフツーのものになっていたりします。そんな技術はたくさんあります。技術のブレークスルーと言うんですが、高コストから低コストへ、少量生産から大量生産へ、つまり航空機工学から自動車工学へ、軍需産業から民生産業へ、という先進技術の流れが結果として技術的進歩を広く多くの人に行き渡らせるのです。