タイヤハウスの空気を引き抜くことが目的
スーパーGT等、ツーリングカーのレーシングマシンを見ると、フロントバンパーの両サイドに小さな羽根が付いている。これがカナードと呼ばれるエアロパーツ。
先端から後方に向かって跳ね上がるような形をしているので、この羽根に当たる空気の力を利用して(羽根の上下で流速の差を生じさせ)、ダウンフォースを生み出す部品と思われがちだが、じつは直接的にダウンフォースを稼ぐパーツではない。
F1のようなオープンホイールではないツーリングカーでは、タイヤにぶつかった空気は、タイヤの前面で高い圧力になり、逃げ場がないのでタイヤハウスを持ち上げる力=リフトフォースとして作用する。
カナードは、このタイヤハウス内の空気を引き抜くために考案されたエアロパーツで、タイヤハウス内の圧力を下げることで、フロントまわりのダウンフォースを増加することを狙っている。
簡単に原理を説明すると、カナードは、ボディ側面に空気の強い渦(ボルテックス)作って、その渦のエネルギーで前後のタイヤハウス内に溜まろうとする空気を引き抜くメカニズムになっている。強い渦を作るには、当然、ドラッグ(抵抗)も発生するので、その効果はやはりトレードオフ。
レーシングカーでは、カナードに頼らずに、タイヤハウス内の空気を引き抜く方法を、日々模索しているところだ。
ストリートカー向けにも、アフターパーツのエアロとして、さまざまなカナードが商品化されているが、「歩行者にとって危険な突起物」とみなされるケースがあり、保安基準をクリアできないものがあるので要注意(とくに板状のカナードはNG)。