自動運転技術にも役立っている電動パワステ
EPSでは、モーターの位置によって構造が複数あります。まずステアリングコラムにモーターを配置したのがコラム式EPSです。もともとのEPSはこの構造で、具体的にいえばステアリングシャフトに対してモーターを配置します。
メーターパネルの奥にモーターが配置されるので、大きな大容量のモーターを採用することができます。しかしステアリングギヤまで距離があるので、細かい制御は苦手です。
ステアリングシャフトの先端、ステアリングギヤに入るところにモーターを配置するのがピニオン式です。日本ではコラム式が主流ですが、ヨーロッパでは細かい制御が可能なピニオン式が主流です。
ラック・アンド・ピニオンのステアリングギヤに対して、2つのモーターを配置して、より高精度でハイパワーを可能にしたダブルピニオンという方式もあります。スカイラインのアクティブステアリングにも採用されていて、将来的な自動ステアリングのために最適なシステムです。
より高精度な制御が可能なのはラック・アンド・ピニオンのラック側にモーターを配置したラック式です。ステアリングギヤとタイロッドの中間なので、よりダイレクトになるからです。NSXのパワステは、この方式でした。ただしエンジンルームの下になるので、スペースを確保することが難しく、モーターの出力を大きくすることが難しいので、大きなミニバンではコラム式が採用されています。
現代のEPSには、車両制御が組み込まれています。直進状態を保持したり、ステアリングの重さをあえて変化させることで、ドライバーが回しやすい、あるいは回しにくい状況を作ることができます。
たとえば直進性が良くないクルマでも、EPSの制御によって直進性を高めることができます。現代のクルマは転がり抵抗を低減するため、トーもキャンバーもゼロに近い値なので直進性に不利です。そこを補正するのがEPSの役割でもあるのです。
自動ステアリング機能は、油圧パワステでは不可能です。モーターによってステアリングを切る必要があるからです。油圧パワステはアシスト力を出すものであって、自発的にステアリングを回すことばできないからです。将来性を含めて、油圧パワステとEPSには、大きな差があります。
理想はステア・バイ・ワイアです。スカイラインのアクティブステアのように、ステアリングシャフトとステアリングギヤが連結されておらず、コンピューターの判断によってモーターが作動するシステムが求められます。それによって単に操作力の低減だけでなく、いろいろ制御が拡がるからです。
パワステは単なるアシスト装置から、自動運転の機能の一部として進化したわけです。