この記事をまとめると
■自動車用語「LSD」は「リミテッド・スリップ・デフ」の略称
■デファレンシャルギヤの作動を制限する装置を指す
■「LSD」の仕組みやメリット・デメリットについて解説する
タイヤの左右回転差を調整する「デフ」の作動を制限する装置
LSDは、非常に強力な幻覚剤=麻薬が有名だが、自動車用語では「リミテッド・スリップ・デフ」の略称のこと。クルマがコーナリングしているとき、外側のタイヤのほうが長い距離を走ることになるので、内側のタイヤと外側のタイヤの旋回半径が違う。
そこで、コーナリング時に駆動輪の外側のタイヤが内側のタイヤよりも速く回るようにして、無理なく曲がることができるように左右の回転差を調整する装置が付いている。それがデファレンシャルギヤ=略称「デフ」と呼ばれるもので、ファイナルギヤに組み込まれている。
このデフのおかげで、クルマはスムースに曲がることができるのだが、欠点もある。たとえば、滑りやすい路面で、片輪がスリップしてしまった場合、もう片輪には駆動力=トラクションがかからなくなってしまう。
同様に、高い横Gのかかるコーナリング時は、イン側のタイヤがリフト気味になり、しっかり接地しているアウト側の駆動輪にまでトラクションがかからず、クルマが前に進まなくなる。
ラリーやジムカーナ、サーキット走行などのスポーツ走行では、たとえインリフト気味になったとしても、アクセルオン時は常にトラクションがかかるようにしておきたいので、片輪の接地性が下がったときでも、もう片輪に大きな駆動力がかかるよう、デフの作動を制限する装置として開発されたのが、LSDというわけだ。
インリフトしても空転をふせいでくれるデフなので、古い人は「ノンスリ(ノンスリップデフ)」とも言う。
現在のLSDは大きく分けて3種類。ひとつは左右輪の回転差が一定以上になるとクラッチプレートが開いて差動を制限する、いわゆる機械式LSD(回転感応式)。もうひとつがトルク差に感応するもので、純正LSDに多い、トルセン式やヘリカル式がこのタイプ。アフターパーツやオプションでのLSDは、今のところ機械式が主流。
回転感応式なので、右輪で回転差が生じると回転が遅い方のタイヤ(例:インリフトしたときの外輪)に大きな駆動力がかかるようにしてトラクションを稼ぐ仕組みなので、ロール量が多くなったり、縁石に乗ったりすることが多い、モータースポーツには向いている。