幅広い回転域でエンジンを稼働させると効率が悪い
さて、シリーズハイブリッドの利点は駆動力とエンジン回転をリンクさせる必要を少なくできること。通常のエンジン車やパラレルハイブリッドでは速度の上昇に合わせてエンジン回転が上昇するといった具合にリンクする傾向にある。これ、自然なことだと思っているかもしれないが、エンジンの特性からすると幅広い回転域を使うというのは効率面からいって不利。
その点、シリーズハイブリッドというのは、エンジン効率の有利な領域を使って発電に専念させることができる。ノートe-POWERでバッテリーの充電量が足りないとき、エンジンが2500rpm以上でいきなりかかるのは、そうした効率の良さを追求しているからなのだ。
ちなみに、全開加速に近い状態では、バッテリーに溜めるというよりも、エンジンが発電した電気をすぐさま駆動モーターが使ってしまう状況になるので、エンジン回転数は上昇してしまう。エコドライブをしているときにエンジンのオイシイ領域だけを使えるのが、シリーズハイブリッドの利点といえる。
じつは、そうしたメリットを活かした先達は日本車に存在している。それがホンダのアコード(ハイブリッド)。全長5m近いボディに2リッターエンジン+2モーターのハイブリッドを搭載するアコードの燃料消費率は30.0~31.4km/Lとコンパクトカーもびっくりの数値。
そして、一般道を法定速度で走っている限り、アコードのパワーユニットはシリーズハイブリッドとして作動しているのだ。エンジンがタイヤを直接駆動するのは高速走行時に限られている。
さらにアコードにはパドルによって回生ブレーキ(駆動モーターの発電により減速するシステム)の強さを4段階で調整する「減速セレクター」と呼ばれる機構も付いている。
さらに進化したノートe-POWERにおいては、ドライブモード(Sモード、ECOモード)によっては回生ブレーキで停止するまでの減速をすることが可能。つまりアクセルペダルを踏み込んで加速、戻して減速といった「ワンペダルドライブ」が楽しめる。すでにBMWi3が実現しているが、国産コンパクトクラスで、こうした未来的体験ができるのはひとつの価値といえるだろう。
シリーズハイブリッドというのはガソリンを補給して走るクルマであり、排ガスも出すので、まるでゼロ・エミッションの電気自動車と思わせるようなキャッチコピーに関してはいかがなものかと思う。
しかし力強いモーターを使った純粋なシリーズハイブリッドであることやワンペダルドライブのより新しい運転体験は、「コンパクト・ハイブリッドの新しいカタチ」として、新しい価値を提案しているのは間違いない。