トッププロでも押す派と引く派と併用派が1/3ずつだった!
ハンドルの切り方には、大別して二通りのやり方がある。たとえば、ハンドルを右に切るときに、右手をステアリングのトップ=12時の位置に迎えに行き、そこから3~4時の位置まで引き回す。これが、ハンドルを「引く」というパターン。
反対に、ハンドルを左に切る前に、右手を7~8時の位置に下げておいて、そこから12時ぐらいの位置まで押し上げるやり方を、「押す」という。
じつは10年ほど前、当時の全日本のトップドライバー約30名に、押す派か引き派かをアンケートをとってみたことがある(右利き・左利きも)。
その結果、押す派が1/3、引く派が1/3、そして「どちらでもない、両方併用、無意識にやっている」というドライバーが、1/3という結果だった。
考えてみれば、シフト操作が必要なときは、右コーナーでも左コーナーでも、右手一本(左ハンドルなら左手一本)で操作する必要があるわけで、そうなると、必然的に、押す・引く併用になるので、どちらがベターとは決められない。
それより、もっと重要なのは、これから曲がるコーナーに対し、必要なハンドルの切れ角を正確に予想すること。最低でも、ハンドルを持ち替える必要があるかないかは、正しく見極め、ハンドルの回転が180度以内で足りそうならば、9時15分の位置を握ったまま、両手で回せばOK。
それ以上大きく切り込む必要があるコーナーでは、上記のように、片手をあらかじめずらして、押し上げるか、切り下げればいい。これは好みの問題だ。
一方、とりあえず大雑把にハンドルを切って、そこから何度も切り足したり戻したりして補正するのは百害あって一利なし。そういう大雑把なハンドル捌きは、クルマの挙動を不安定にし、なおかつ切った量がわかりづらくなるので、ハンドルを戻すときにも、もたつくことになるからだ。
もうひとつの肝心なのは、ハンドルを強く握りしめないこと。
剣聖 宮本武蔵は、五輪書の「太刀の持ちやうの事」という項で、「大指ひとさしを浮ける心にもち、たけ高指しめずゆるまず、くすしゆび、小指をしめる心にして持つ也」とその極意を記しているが、モノを握る極意は、剣もハンドルも、ラケットも釣竿もバットもゴルフクラブも同じこと。親指と人差し指は浮かすような感じで、中指は締めず、ゆるめず、薬指と小指は締めるような気持ちで、掌に隙間ができないように握るのがベスト。
車載ビデオを見ると、一流ドライバーほど握り方や手首に力みがないのがわかるはずだ。反対に、手首が固まって、肘を張り、肩が固まっているようなドライバーは、スキルが低いと言わざるを得ない。
ハンドルは上記のように、軽く握り、決して手先で回そうとせず、手首から腕、肩にかけて、脱力させて、身体の中心、肩甲骨付近からハンドルを動かせるようになればホンモノ。
プロが運転する車載ビデオを見て、ドライビングを見比べるなら、ハンドルを切るタイミングや、戻し方、カウンターの当て方や、転舵スピード等に注目するだけでなく、もっと身体使いに注目してみることをおすすめする。
なんといっても、モータースポーツだって「スポーツ」なのだから!