【今さら聞けない】サスペンションの役割って何? (2/2ページ)

スプリングとダンパーとスタビライザーの協調で挙動の特性が決まる

 パーツをひとつずつ機能で説明しましょう。スプリングはロール角やピッチ角の最大値を決めます。ダンパーは、その最大値までの時間を決めます。

WEB CARTOPスタビライザーは左右のサスペンションの動きが違う時に、揃えるように機能します。つまりロールを抑えるわけですね。この3つのハーモニーがクルマの走り味になります。WEB CARTOP

 しかしサスペンションといえば「乗り心地」というキーワードを忘れるわけにはいきませんね。発展途上国では道路整備が追い付いていないので、どうしてもソフトな足回りが好まれます。デコボコ道を走るには、それが必要なんですね。そして世界最高水準の舗装技術をもっている日本も、そういうフワフワなサスペンションが「良い乗り心地」だと思っている人が多いんですね。

 フワフワにするとボディの変位量が大きくなります。これを「バネ上が落ち着かない」と言ったりします。それは結果として荷重が安定せず、タイヤの性能を生かしきれません。重心が高いほど変位量を少なくしたいので、スプリングは硬くする必要があります。しかしミニバンのサスペンションはフワフワが多いですね。物理的には考えられないことです。WEB CARTOP

 タイヤの性能を生かし切れないというのは、何もサーキットのコーナリング性能のことを言っているわけではありません。急ブレーキを踏まなければならない、ダブルレーンチェンジのような動作で緊急回避しなければならない、コーナーの先でブレーキングしなければならない、といった安全に関わることなのです。とくにミニバンのような重心の高いクルマだと、横転というアクシデントにつながるのです。WEB CARTOP

 大事なのは人間です。フワフワの乗り心地でクルマ酔いする、というのは論外です。優れた乗り心地というのは人間の知覚や感覚にマッチしたものでなければなりません。クルマをドライバーがコントロールする以上、ドライバーに正しい情報を伝え続ける必要があります。まるで宙を飛んでいるような感触ではダメなんです。短いガツガツとした振動は伝えながら、ドライバーの姿勢を安定させるのが良い乗り心地なのです。

 日本人の感覚での良い乗り心地は特殊なので、理解していただけないかもしれません。クルマはソファーでもベッドでもないんですね。そのあたりの感覚がレベルアップすれば、日本車はもっと魅力的で安全なものになると思うのですけども……。


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