当初はメンテナンス性や静粛性の点で理想的だった
駆動方式はクルマの基本骨格を決めます。その理由は、やはりクルマのなかでもっとも重量のあるパワートレイン=エンジン+トランスミッションをどこに搭載するかによって、クルマの構造が変わってくるからです。それが最終的に快適性や乗り心地、そして運動性能まで左右することになります。もちろんそれを改善する手法や技術もありますが、素性を変えることはできません。
RRという駆動方式は、もっとも古くから存在する構造です。日本ではRRと呼びますが、一般的にはリヤエンジンと呼ばれます。前輪でステアリングを、後輪で駆動をするという分担にし、その後輪の後ろにエンジンを載せるのが、もっともシンプルなのは間違いありません。整備性を考えてもリヤエンジンは理想的で、室内から隔離できるので音と振動の面でもメリットがあります。
ポルシェ911は1950年代後半から開発がスタートしています。生産されていたポルシェ356は2シーターで企画され、マイナーチェンジで2+2シーターへと改装されたものの室内空間は狭く、そこを改善することも求められました。
それで水平対向エンジンをリヤに搭載する基本的な構成はポルシェ356をそのままに、高性能エンジンと拡大されたキャビンが与えられのがポルシェ911の出生ということになります。
ポルシェ911のデビューは1963年ですが、その直後からオーバーステアに悩まされ、その対策に追われます。ホイールベースを伸ばしたり、フロントバンパーの内側に鉛のウエイトを載せたり、考えられるいろいろな対策をすることになります。それはリヤエンジンの悪癖であり素性なので根本的に排除することは難しい。そして1967年、ポルシェはVWとの共同開発でミッドシップスポーツカー、ポルシェ914を登場させます。
高価なポルシェ911には手が出なかった層にアピールすることができ、ポルシェ914は大きな成功を納めます。ポルシェにとってポルシェ911は偉大なモデルではありますが、ポルシェ914はメーカーとしての礎を作ったモデルです。
コストを意識し過ぎてシンプルになり過ぎた外観以外は、当時のスポーツカーとしてとても魅力的な存在だったのです。もちろんハンドリングも、ポルシェ911のような問題をもちません。
スポーツカーの性能はどんどん上がっていきます。重いエンジンを積み、ハイパワーとなれば、基本的な特性が出やすくなります。ポルシェはアメリカ市場も見据えて、FRへと方向転換することを決意します。