公式にはモータースポーツ活動の再編成だが……
WRC第11戦のフランスでセバスチャン・オジェが今季4勝目を獲得し、ドライバーズ部門で4連覇を達成するほか、続く第12戦のイギリスでもオジェが5勝目を果たしたことでマニュファクチャラーズ部門でも4連覇を制覇。
まさにフォルクスワーゲンは2013年にデビューして以来、ポロRを武器にWRCで黄金期を築いてきたが、11月2日、フォルクスワーゲンは2016年を最後にWRCでの活動を終了することを発表した。
撤退の理由について「車両レンジの電子化が拡大していくなか、将来のテクノロジーに重点を置かなければならない。WRCで成功を収めた今、フォルクスワーゲン・モータースポーツを再編成し、将来の車両技術に関して専念していく」と発表し、今後はEVモデルの開発に集中。
同時に「カスタマーレーシングに重点を置く。サーキットレースでのゴルフGTI TCR、ラリークロスでのビートルGRCのほか、新たにR5規定のポロを開発する」と付け加えていることから、カスタマー用のマシン開発を実施する見込みだ。
つまり、公式発表によればWRCから撤退する理由は、あくまでもモータースポーツ活動の再編成となっているが、2015年の排ガス規制不正問題が影響したことは想像に難くない。
2016年からフォルクスワーゲンは活動予算を縮小した上でWRCに参戦し、3月には2019年までの活動継続を発表していが、巨額の制裁金を前に活動プランの見直しを迫られたのだろう。同時に内外に向けた姿勢として自粛する必要があったに違いない。
レギュレーションが一新され、新型のWRカーで争われる2017年もフォルクスワーゲンは2000年および2002年のチャンピオン、マーカス・グロンホルムをテストドライバーに起用し、積極的に開発テストを実施。
抜群の戦闘力が伝えられていただけに2017年のWRCでもフォルクスワーゲンが優勝候補の最右翼と思われていたのだが、活動を休止することからWRCはシトロエン、ヒュンダイ、フォードの有力カスタマーチームであるMスポーツ、そしてニューカマーのトヨタによる戦国時代が幕を開けるに違いない。
ちなみにフォルクスワーゲンのエース、オジェを筆頭にチームメイトのヤリ-マティ・ラトバラ、アンドレアス・ミケルセンは引退を表明せず、ラリー活動の継続が見込まれているだけに、各ワークスチームへの移籍を含めて、その去就が注目されている。
(写真:Red Bull Content Pool・Ford[Marcus Grönholm])