ブレーキ性能が向上した現在でもフェードが増えている!
フェードとは、正確には「フェード現象」と呼ばれるもので、ブレーキを多用しすぎて制動力が低下した状態のことをいう。クルマに限らず、車輪で動く乗り物はブレーキをかけると摩擦力によって速度を熱に変え、その熱を空気中に発散することで速度を落とす機能がはたらく。
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ディスクブレーキならブレーキパッドとブレーキローター、ドラムブレーキならドラムの内側とブレーキシューとの間の摩擦熱が高くなりすぎると、摩擦面にガスが発生して摩擦力が下がり、ブレーキが効きにくくなる。これが「フェード現象」だ。
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同様に「ペーパーロック現象」もブレーキを酷使しすぎることで制動力が落ちる現象だが、これはブレーキフルードが熱を持ちすぎて一部が沸騰し、ブレーキフルードの内部に気泡が発生した状態のことをいう。空気は圧縮されやすいため、ブレーキフルード内に気泡が混じるとブレーキ系統の油圧が下がり、制動力も落ちるという原理だ。
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どちらも自動車教習所で習う用語なので、クルマへの興味がゼロの主婦ドライバーでも知っているはずの基礎的な用語である。構造上、熱がこもりやすいドラムブレーキは、今も小型で軽量な乗用車の後輪に採用されているが、コンパクトカー以上のクラスでは4輪ディスクブレーキが当たり前となって久しい。
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高出力車や重量の大きなクルマはさらに冷却性能に優れたベンチレーテッドブレーキの装備率が高くなったおかげで、今では普通に運転している限り、フェードもペーパーロックもほとんど発生しなくなった。
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昔から、長い下り勾配が続く道路では「エンジンブレーキ使用!」などと警告する標識が立てられており、そんな道路ではフェードやペーパーロックを起こした時にクルマを停める待避所が設けられているが、長らく使われないせいで雑草だらけになって荒廃している姿をよく見かける。
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もはや、現代ではフェード現象をよく起こすのは峠の走り屋など、ブレーキに極端な高負荷をかけがちなドライバーぐらいといわれている。
しかし、やはり今でも重量の大きなSUVやミニバンは要注意だ。
重量級のクルマは基本的にブレーキの負担が高いので、昔はそれを意識して運転するドライバーが多かったものの、最近のSUVやミニバンは走行安定性が高くなったことが意外な盲点となっている。重量級のクルマでも軽快な感覚で走れるようになっている分、ブレーキにかかる負担はさらに増していることを意識したい。
ブレーキの冷却性能が高いスポーツモデルでも、サーキット走行ではわずかな周回でアッという間にフェードすることが少なくないので、サーキット走行の初心者は、フェードへの警戒を特に強めることが重要となる。
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また、最近は運転技量が低下した高齢者ドライバーや運転経験の浅いサンデードライバーが増えたせいか、ブレーキ性能の向上に反してフェードの発生率が上がっているともいわれている。
ブレーキの冷却性能が向上した今でも、フェードとペーパーロックの発生リスクは依然として残っていることを忘れないようにしたい。