ステンレスボディにガルウイングドアが特徴
世界中に存在した泡沫メーカーたちのなかでもデロリアンは有名なほうだろう。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』にタイムマシンとして登場していただけに、クルマに興味がない人でも知っていることが多い。また、クルマ好きなら、サビないステンレスでできたガルウイングのクルマね、といったところか。
作っていたのはデロリアン・モーター・カンパニーというまんまの会社で、そもそもDMC-12と呼ばれる、いわゆるデロリアン1モデルだけで倒産したという悲しい歴史をもつ。デロリアンとはジョン・デロリアンという人物から取ったもので、GMの副社長だった。それが自分の作りたいクルマを作るといって飛び出して、設立したのがデロリアン社だ。1981年のことである。
ただ、飛び出したはいいが、開発部門もないため、すべて寄せ集めで作られているのが本当のところ。デザインはジウジアーロが担当し、ボディやメカはロータスが担当。さらにエンジンは当時、プジョー/ルノー/ボルボが作った合弁会社、PRV社製の2.8リッターのV6を搭載(アルピーヌA310と同じ)するなど、まさに外注ばかりだった。
生産については、イギリスで行なわれていたため、アメ車と思っている人が多いが、ハーフというか帰国子女的な位置づけといったほうがいいかもしれない。とはいえ、GMの元副社長が立ち上げたメーカーということもあって、当初の販売は順調だったし、バリエーションの拡大も計画されていた。純金ボディも!
しかし、麻薬で逮捕されたり、不正経理をしたりなど、会社としてはいい加減で、1982年には倒産してしまう。つまり1年ほどしか存在しなかったわけで、デロリアン自体の生産台数も8000台ほどに止まった。
いろいろと伝説というかエピソードが多いクルマだが、それほど珍しいわけでは正直ないし、価格も高騰というほどでもない。ちなみにトヨタも所有していて、以前はイベントによく置いてあったし、現在はトヨタ博物館に展示されいたりする。
現在、パーツの供給は、デロリアン・モーターなる会社(設備などを譲渡された)が供給しており、そこから通販で手に入れることが可能。EV化の計画も各地で進んでいる。もちろんボディはサビることないが、以前オーナーと話したところによると、家庭用のスポンジたわしでたまにこすってやるとのことだった。