もともとはボディ剛性と乗降性を両立するため
スーパーカーといえば「ガルウイングドア」というイメージが強い。とはいえ、ガルウイングドアというのは上に開く跳ね上げ式ドアの一種であり、細かい分類でいえば数は少ない。
おそらくメジャーなのはシザーズドアと呼ばれるランボルギーニ方式だろう。そのほか開いた状態でドアパネルが前方に向くバタフライドアと呼ばれる斜めに広くドアも跳ね上げ式の一種だ。
ちなみに、代表例を挙げると、ガルウイングドアはマツダ・オートザムAZ-1、メルセデスAMG SLSなど。
シザーズドアは、現行モデルのアヴェンタドールにつながる12気筒ランボルギーニに多く採用されている。
バタフライタイプは古いところではトヨタ・セラ、最近ではマクラーレンが採用している。
さて、このようにスーパーなクルマの象徴ともいえる跳ね上げ式ドアは、通常のヒンジドアのクルマを跳ね上げに改造するキットが出ているほどインパクトが強い開き方だ。
そうしたイメージが強いのは、ドアを開けた際の風情に非現実感があることはもちろん、もともとガルウイングドアを採用していた理由によるところが大きい。
たしかにルーフ部分まで開閉するガルウイングドアは乗降性に優れている面もあるが、それがスポーツカーに採用されたのは、そうしなければ乗降性が著しく悪化するからであった。
まさにガルウイングドアの始祖といえるメルセデス・ベンツ300SL(W194)はボディ剛性を高めるためにサイドシル部分が大きく、そのためにガルウイングドアが生み出されたといわれている。軽自動車のAZ-1にしても驚くほどサイドシルは高く、ガルウイングドアの採用は必然であった。
だからといって乗り降りしやすいわけではない。実際に乗り降りしてみればわかるように、ガルウイングドアであっても潜り込むように乗り込むことになる。そこまでしてボディ剛性を欲したのである。そうした必然から生まれたドアをもつことは本気のスポーツカーの証であり、だからこそスーパースポーツの記号となったのであろう。
もっとも、トヨタがセラというコンパクトカーで跳ね上げ式ドアを採用したのは狭い場所での乗降性を向上させるという狙いもあったという。余談になるが、タクシー業界で後席のルーフが跳ね上げ式(スイングルーフ)となっている車両が結婚式の送迎用として使われているのも、文金高島田の花嫁が乗り降りしやすいためで、同様の考え方から生まれたものといえる。