独特の競技に初出場の洗礼を浴びた!
米国内で転戦するレッドブル・グローバルラリークロス(GRC)の最終戦がロスアンゼルス郊外のサンペドロにあるポートオブロスアンゼルスで開催される。このLA戦が2016GRC最終戦の2レースとなるが、ここに日本のトップラリードライバー、新井敏弘選手がスバルラリーチームUSA(SRTUSA)から参戦している。
前日のマシンからの出火で、レース1への進出を果たせなかった新井選手のWRX STIは、出火後にピットに戻されると、すぐにバラバラにされ、清掃、そしてエンジン&ハーネスの交換作業を開始。
メカニックたちの頑張りで、深夜には修復を完了。翌日曜日の朝には新車のようなきれいな状態に仕上がっていた。この辺りはさすがラリーチームだけのことはある。
午前7時半という非常に早いタイミングでの朝イチの練習走行セッションから、無事に88号車は走りだし、新井選手も走行に慣れてきたようでチームメイトのデビッド・ヒギンズ選手に次ぐ11番手でこのセッションを終える。
タイムスケジュールは間髪入れずに、すぐに予選、ヒートレースと続く日曜日。
新井選手は、予選で無線の端子が接触不良となってスポッターからの指示が入らなくなってしまい、他車のアタックを妨害したとしてペナルティを受けることとなってしまった。ペナルティはトップタイム抹消というもので、44秒311のタイムで残念ながらポジションは13番手(ベストタイムは43秒308)。
同じWRX STIに乗るチームメイトのクリス・アトキンソン選手は42秒573で3番手、そしてデビッド・ヒギンズ選手は43秒573で12番手。結果、SRTUSAからはクリス選手だけが予選トップ6台で再び予選を行なうノックアウトセッションに進出。そのノックアウトセッションでは、クリス選手がなんとトップでこのセッションを終えるという好成績を残すことになった。そして続くヒートレース、セミファイナルとこの日のレース形式での走行は、厳しい戦いが繰り広げられた。そして迎えたLCQ(敗者復活戦)。合計7台が参戦するこのセッションで、新井選手がまさかの6位、最下位。つまり決勝に進出できない1台となってしまった。
それは、ジャンプ中に他車に追突され、コースアウトした際に、エンジンまで止まってしまたため再スタートに手間取ったことによるもの。このセッションはタイムではなくチェッカー順であるため、万事休す。
新井選手は「満員電車に飛び込む感じで場所をこじ開けていく感じのレースだね。引いたら負けちゃうし、かといって行きすぎると、ヒート1のときみたいにペナルティを食らっちゃうし……。初めてのドライバーにはかなり厳しい制裁が来るとは聞いていたけど、実はいまだにどこまで当てていいのかわからない。
もっと事前からしっかりとテストをして、自分仕様のマシンを仕上げられれば、タイムももっと縮められたんじゃないかなぁ。いろいろと消化不良のところはあるけれど、勉強になったこともあったし。次に参戦したら、クルマにもレースにも理解が深まるし、決勝にも進めると思う」というコメント。ぜひ次回の参戦を期待したい。
新井選手を除く12名の選手が出場した決勝レースでは、スタート直後から各所で激しいつばぜり合いと接触が相次ぎ、マシンの外観は激しく損なわれていく。わずか12周のレースだが、それもままならないマシンも続出し、非常に厳しいレースであった。
しかし、そのハードなレース、スタートからチェッカーまでトップを譲らなかった#38フォード・フィエスタに乗るチップ・ガナッシ・レーシングのブライアン・ディーガン選手が見事優勝を果たした。
そして2016年のシリーズタイトルは、このレースで2位に入ったフォルクスワーゲン・アンドレッティ・ラリークロスの#41スコット・スピード選手が手にした。
決勝レース後のパドックでは、損傷したマシンから外されたエアロやホイールなどの各パーツがファンに手渡された。GRCは、レースだけではなく、レース後も楽しめるイベントであった。
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