ロールやピッチもただ抑えればいいというものではない
●ピッチング
ピッチングは、クルマの重心を中心に車体を左右方向に貫く軸=Y軸まわりの回転モーメントのこと。
簡単にいえば、ブレーキをかければ、クルマが前のめり(ノーズダイブ)し、加速をすれば後ろが沈む(スクォート)する、あの動きがピッチング。
サスペンションが固いクルマは、ピッチングの量が少ないが、サスペンションのジオメトリーでも、アンチダイブジオメトリーといって、ピッチングを少なくするセッティングもできる。
とはいえ、このピッチングもローリングも、なくしてしまえばいいというものではない。事実、F1をはじめとするレーシングカーも、きちんとローリングもピッチングも発生しているので、多すぎてもダメ、少なすぎてもダメということを覚えておこう。
●ヨーイング
最後がヨーイング。クルマの重心を中心に車体を上下に貫く軸=Z軸まわりの回転モーメントのこと。回転(慣性)モーメントは、「出っ張りの重さ×出っ張りの長さ」で決まる。
出っ張りとは、回転軸の中心(Z軸)から離れているものなので、エンジンなどの重量物は、できるだけ車体中心に集めた方が、小さなきっかけでヨーが発生し(クルマが曲がり出し)、小さな力でヨーが収束するので、アジリティが高く、運動性能に優れている。
F1や本格的なスポーツカーが、ミッドシップレイアウトにするのはこのため。逆に末端の重いクルマ、例えばフロントヘビーのFF車などは、ヨーが発生しにくく、回頭しづらい……。
というわけで、運動性能を高めるには、ショートオーバーハングにしたり、アルミボンネット、カーボンバンパー、チタンマフラーなどにして、末端の重量を軽くするのが、非常に効果的になる。