生産コストが高く搭載にエンジンルームの面積も必要
水平対向エンジンは前述した優位性を持つ一方で、部品点数が多く、排気の取り回しが複雑になるので生産コストが高くつくという致命的な問題がある。
また、薄っぺらくて低重心である反面、横幅が広くなるので、小型車ではエンジンルームに収めるのもひと苦労。5ナンバークラスのサイズだと、排気量を拡大したり、ロングストローク化することが難しくなる。横方向に空間的な余裕がなさすぎて整備性もよくない。
初代や2代目レオーネなどの古い世代のスバル車のエンジンルームを見ると、パワステやエアコンなどの補器類を収める場所の確保に難儀していることがわかる。ターボでもタービンの置き場に苦労していた。水平対向エンジンはボディにマウントするのも難しいといわれる。
スバルの場合は、初の乗用車スバル1000を開発する際に、元飛行機のエンジニアだった百瀬晋六氏という志の高い人が開発を取りまとめたので、コスト度外でよいものを徹底追及した結果、FFに最適なエンジンとして水平対向を採用。これがすべての始まりだった。
スバル1000は莫大な開発費がかかった割には期待したほど売れず、全然儲からなかったことを他の国産メーカーは横目で見ていたので、どこも水平対向エンジンを採用しなかった。
直列やV型でもバランスシャフトをつければ振動を抑えられるし、アンチシンメトリカルなエンジン横置きのFF車でも日本の道路を普通に走るぶんには何の問題もないので、国産の小型実用車は安くて作りやすく、汎用性も高い直4の搭載が主流となったのだ。
スバルも、過去には小型の実用車の開発時(インプレッサ)に直4の搭載を検討したことがあったが、独自性を重視した結果、創業当初の信念を貫いて水平対向エンジンの採用続行を決断している。