急いでいても譲り合いの精神が事故軽減へ
歩行者が渡ろうとしている「信号機のない横断歩道」で、一時停止した車はわずか 7.6%。JAFが、今年8月15日(月)~9月1日(木)、全国でおこなった実態調査によると上記のような集計結果となっている(交通マナーに関するアンケート 集計結果より)。まことに嘆かわしい。ドライバーの歩行者優先の精神は、どこに行ってしまったのだろう?
と、言いたいところだが、調査方法の詳細を見ると、次のように書いてある。
・センターラインのある片側1車線道路で、原則、調査場所の前後5m以内に十字路及び丁字路交差点がない箇所。
・道路幅員が片側2.75m〜3.5m、交通量が3〜8台/分(目安)とした。なお、調査場所の制限速度は40~60km/hの箇所を選定。
この条件であるなら、一時停止しないドライバーが多いのも頷ける気がする。
交差点で右左折するとき、横断歩道を渡ろうとしている歩行者がいたら、9割以上のドライバーが一時停止し、「お先にどうぞ」と譲るであろう。
しかしセンターラインのある道を、直進状態で40~60km/h(法定速度なので、実測はプラス10~20km/hぐらいと推測できる)で走っているときに、道端で横断歩道を渡ろうとしている歩行者を見かけたからといって、わざわざ一時停止するだろうか?
ちなみに、道路交通法には次のようにある。
<横断歩道等における歩行者等の優先>第38条
『車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という。)に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない』
要するに、
・クルマは、横断歩道を歩行者(含む自転車)が渡ろうとしている場合は、一時停止しなければならない。
・クルマは、横断歩道の周辺に、横断歩道を渡ろうとしている歩行者(含む自転車)がいない場合のみ、通過してよろしい。
道交法がこのように定まっていて、違反者には3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金という罰則がある以上、信号機のない横断歩道に歩行者がいたとき、一時停止しないで通過したところを、おまわりさんに目撃されると、問答無用で切符を切られてしまう。このようなルールがあることをすっかり忘れていたドライバーは、大事なことなので再度インプットし直しておこう。
しかし、このルール、現実に即しているとは思えないのは筆者だけだろうか……。
普段、自分が歩行者として道路を利用しているときを思い出しても、信号機のない横断歩道では、「クルマの流れが途切れてから渡る」という暗黙のルール(一種の不文法)として、ドライバーにも歩行者にも認識されている気がするがいかがだろう。
JAFの調査のように、交通量が毎分3~8台となると、とくに微妙。
もっとも少ない、3台/分だとすれば、20秒に1台しかクルマが来ないので、足の不自由な高齢者等でなければ、誰かが一時停止しなくても十分道路を横断できる余裕があるはず(横断に気が付いたドライバーは、減速、徐行はするべきだとしても)。
逆に毎分8台だと、均等に走っているならば7.5秒に1台が通過する計算なので、けっこうな交通量だ。こうした状況でドライバーがルールを守って一時停止すると、後ろのクルマにクラクションを鳴らされたり、うっかり追突されることも考えられる。また、自分だけが停止しても、対向車が止まらなければ歩行者は横断できないし、結果として、道路全体の円滑な交通の流れを妨げる可能性もある。
肝心なのは、ルールはルールと杓子定規に唱えることではなく、歩行者もクルマもお互いにスムースな移動ができること。歩行者は、クルマが次々とスイスイ走ってくるなら、その流れが途切れるのをしばし待つ。ドライバーは、高齢者や子供、あるいは複数の人が、横断歩道を渡れなくて待っているようなら、減速、徐行、一時停止と配慮する。
ドライバーもクルマを降りているときは、歩行者だろうし、家族には免許をもっていない人(子供など)もいるだろうから、どちらの立場もわかるはず。
少々急いでいるときでも、譲り合いの精神、心の余裕が欲しいものだ。と同時に、あくまで現行法では、横断歩道の周辺に、横断歩道を渡ろうとしている歩行者(含む自転車)がいたら、一時停止をするのが義務ということも、再度、認識しておいてほしい。
【詳しくはこちら】
http://www.jaf.or.jp/eco-safety/safety/environment/enq/2016_06.htm