経営破たんしていないのはフォードだけ
かつて、アメリカの三大自動車メーカーであるゼネラル・モーターズ(GM)、フォード、クライスラーのことを「ビッグスリー」と呼んでいた。自動車市場の大きなアメリカのトップスリーは、すなわち世界のビッグスリーに相当するというわけだ。
しかし、クライスラーがダイムラーと合併した1998年あたりから、ビッグスリーという言葉を使うことは減っていったように記憶している。ダイムラー傘下にクライスラーが入るカタチであったことも影響しているのだろう。
また、新興国市場の隆盛に伴い、北米市場のプレゼンスが小さくなっていったこともあり、各社の本社所在地にちなみ「デトロイトスリー」と呼ばれることが増えていく。
その後、ダイムラーはクライスラーを売却。リーマン・ショックの影響により2009年には倒産の危機に見舞われる。その際、政府からの融資を受けて、なんとか生き長らえ、そしてフィアットグループの傘下に入り、現在はFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)となった。
クライスラーが倒産の危機となっていた同じリーマン・ショックの時期、GMも経営破たんしている。アメリカ政府などの支援のもとに危機脱出を目指したが、2009年6月には倒産。ニューヨーク証券取引所から上場廃止となってしまった。その後、アメリカの国有化企業として再スタート。
こうしてビッグスリーのうち2社が破産状態に陥っていた時期、フォードだけは元気だった。それ以前のフォードもけっして好調だったわけではないが、かつてマツダでZoomZoomキャンペーンを始め、現在はフォードのCEOとなっているマーク・フィールズ氏による改革が功を奏していたからだ。
結果として、「かつてビッグスリーと呼ばれた三社において、破産していないのは一社(フォード)だけ」となっている。もっとも、そうした成功につながった選択と集中の結果として、2016年の日本市場からの撤退につながったという面もあるわけだが……。
というわけで、かつてビッグスリーと呼ばれた3社のうち2社が経営破たんしたという過去があり、またクライスラーの名前は残っているもののフィアット傘下になった今、「デトロイトスリー」という呼び方さえ、はたして適切なのかという疑問さえあるのではないだろうか。