目に見えない部分の積み重ねでドライバビリティを向上
4つのタイヤがしっかりと路面を捉えて意のままのハンドリングを実現しながら、上質なドライブフィーリングを追求した新型BRZの進化のポイントは、ボディ、サスペンション、VDC、パワーステアリング制御の変更など多岐にわたる。
シャシー設計のキーマンとなった中田浩之さん(第一技術本部シャシー設計部)に、その狙いを聞いた。
「ハード面でいえば、ボディのリヤまわりを中心に補強し、サスペンションはスプリングのバネ定数、ダンパー、スタビを変更しています。これは走りの質感を高めるためです」
従来型ではスポーツ性能優先のセッティングだったが、ドライバー以外の乗員にも不安を与えない乗り心地に仕上がっているという。
「ボディがしっかりすると、サスペンションの種類や設定の変更に対する許容度が上がりますので、旋回性能や接地感を高めながら、乗り心地を向上させることができるようになりました。とくにサスペンションの初期入力の部分ではしっとりとした上質な乗り味を体感していただけると思います」
さらに、今回はVDCに「トラックモード」を新設定した。
「BRZでサーキットを走るような高いドライビングスキルをおもちの方にとっては、VDCの駆動力制御が不満に感じられることもあると思います。そこで、制御を完全にオフするトラックモードを設定しました。新しいサスペンションに合わせて、パワーステアリングの制御も最適化しています」
目に見えない「味付け」にこだわるチューニングがまさにスバルだ。
「スポーツカーとしての乗り味」はどのように決められたのか? 車両実験を担当したのは、出島俊彦さん(第一技術本部車両研究実験総括部)と岡田幸宏さん(第一技術本部車両研究実験総括部)だ。
「スポーツカーには、気持ちのいい加速感や軽快なハンドリングなど、目に見えない部分で、乗っていて楽しいと思える魅力がなければなりません。今回は、そこに磨きをかけました。とくにエンジンのトルクアップとローギヤード化による加速性能の向上は、実験を重ねるごとに『これはいい。もっと良くなる』と確信を強めた部分です。数値では語れない実用域のドライバビリティを高めました。ぜひ乗ってみてください(出島さん)」
「マイナーチェンジでは見える部分と見えない部分の進化があります。ボディ剛性を高めたり操縦安定性を向上させるのは、どちらかというと見えない部分ですが、今回もそうした小さな変更の積み重ねで進化させました。もはや初期のBRZとは次元の違う完成度の高さを実現したと自負しています(岡田さん)」
エンジンのパワーアップやサスペンションの変更ばかりがクローズアップされるが、重要なのはそうした進化を統合して、スポーツカーとしての完成度を高めることなのだ。
マイナーチェンジで追加された新グレード「GT」にも注目したい。
「S」をベースにブレンボ社製ブレーキ、SACHS(ザックス)社製サスペンション、専用アルミホイールを装備。タイヤは標準仕様と同じミシュラン・プライマシーHPで、従来のBRZと同じく「タイヤ銘柄に左右されないメカニカルグリップ」を追求している。