自然吸気エンジンにこだわって馬力を向上
BRZはスポーツカーである以上、運動性能・機能性の進化が求められる。スバルはそういった部分に真摯に取り組むメーカーだ。
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2012 年の登場から4年が経過した。その間、年次改良を重ねながら、今回が初の本格的なマイナーチェンジとなった。
エンジン設計を担当した堺貴史さん(第二技術本部パワーユニット研究実験部)は、その過程を述懐する。
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「BRZはスバルが初めて手掛けたFRスポーツカーでしたが、ゼロからのスタートとしては非常に完成度が高いモデルだったと思います。しかし、だからこそ進化のハードルが高くなります。4 年間に進歩した製造・制御などの技術を次期モデルでどう活かしていくかは、われわれにとっては大きな課題でした」
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マイナーチェンジでは、通常、基本コンポーネンツに手を加えるようなことはしない。しかし、そこに「明らかに改善が見込めるものがある」場合、歴代インプレッサやレガシィのマイナーチェンジを見ればわかるように、スバルというメーカーは、ドラスティックに仕様変更を行なうことがある。そういう会社なのだ。
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「BRZの場合、ユーザーニーズではパワーアップを望む声が多いと思います。ターボ化もひとつの方法ですが、このクルマはNAエンジン搭載を前提に、車両サイズやパッケージング、駆動系のディメンションなどを設計していますので、今回もNAエンジンのままで進化させたかったんです。それで投入したのがアルミ製のインテークマニフォールドです(堺さん)」
実際にこのインマニを開発した及川武志さん(第二技術本部エンジン設計部 )に聞いてみよう。
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「スバルの水平対向エンジンは、特殊なものを除けば、最近ではターボの高い吸気圧力や吸気温度にも耐えられる樹脂製マニフォールドを使っています。しかし、FA20(エンジンの型式名)の場合、吸気ポートのレイアウトとマニフォールドの断面積の関係で見てみると、どうしても構造上の理由で断面積が大きく取れません。そこで、以前主流だったアルミ製のマニフォールドをFA20用に新たに設計して作りました」
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今回のマイナーチェンジでは「ドライバビリティ向上」がテーマになり、そこで打ち出されたのが「ローギヤード化」だった。ディファレンシャルギヤの変速比を下げて、より加速感を高める狙いだ。そのためにはエンジンのピックアップ性能やリニアリティも高めなければならない。
永野弾さん(第二技術本部エンジン設計部)に、エンジン本体にも施された改良点のポイントを聞いた。
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「カムシャフトや吸排気バルブは研磨によりフリクションロスを低減しました。ピストンの表面処理、シリンダーブロックの補剛(強化)も行なっています。これにより、ミッションの各ギヤでの加速感とそのつながりをよくし、エンジンを回しきる走り方を楽しめるようになりました」
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エンジンまわりでは、エキゾーストマニフォールド、エアクリーナーを含む吸気系システムなどが変更され、それに伴ってエンジン制御の最適化も図られているという。新旧エンジンの違いは、従来型のBRZオーナーなら、始動後すぐにわかるという。カタログ上は「+7馬力」のスペックアップだが、エンジニアたちの思いは数値には表れない「進化」をもたらしているのだ。
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