現代ではMRの優位性が少なくなっている
では、なぜゆえミッドシップが運動性能に有利なのかといえば、エンジンという重量物を車体中央部に近づけて載せている点にある。
フロントエンジンにしても、リヤエンジンにしても、コーナリング時にはそれぞれエンジンの重量が慣性として大きく影響する(重い部分に大きな遠心力が発生する)が、ミッドシップ(車体中央)に積んでいれば、そうした影響を抑えることができるのだ。
これは、エンジンパワーを大排気量で求めるしかなかった時代には非常に重要で、大排気量で重い大パワーエンジンを積むスポーツカーで旋回性能を両立させるには、最適なレイアウトといえた。
ただし、スポーツカーもダウンサイジングが進み、軽くてパワーの出せる過給エンジンが増えているなかでは、そうしたアドバンテージは決して絶対的なものではない。
現在の市販ミッドシップ・レイアウト車にはエンジン横置きと縦置きの二種類があるが、横置きでは重心高が上がってしまうし、縦置きではエンジンと同等の重量物であるトランスミッションがリヤ・オーバーハングに置かれてしまい慣性を増やす傾向にある。
そう考えていくと、スーパーGT500マシンなどが採用しているフロント・ミッドシップにエンジンを積み、変速機とディファレンシャルを一体化したトランスアクスルをリヤの車体中央に寄せて配置するFRレイアウトが市販スポーツカーとしての居住性と重量配分を両立させるには有利といえる面もある。
スーパーカーを示す記号としてのミッドシップの価値は強いが、パフォーマンスだけでいえば、絶対的なアドバンテージがあるとはいえないのが現在の状況だ。