フロントの重さによりアンダーステア傾向!
そして試乗車はオプションのカーボンセラミックブレーキを装着している。何周もの連続周回を行ったわけではないが、少なくとも今回の試乗で、走行中にフィーリングが変化することはなかった。
だが、ひとつ注意して欲しいのは、スーパースポーツの神器的に語られるカーボンセラミックブレーキだ。もちろん性能は十分だが、サーキットを走行したあとのメンテナンス費用は凄まじいものがある。千万単位の費用をまったく気にしないような人は別として、それ以外の人でサーキットを楽しみたいならスチールをオススメしたい。
カーボンセラミックは普通に走っている限り減りも少ないので、むしろ公道でしか使わないようなオーナーが装着したほうがいいと思う。
減速からステアリングを切り込みコーナーを脱出。限界域でのコーナリングではアンダーステアが強い。これは新型NSXの目玉である「SPORT HYBRID SH-AWD」の影響だ。
このシステムはフロント左右輪を独立したモーターで駆動し、プラスマイナス含めたトルクを与えることができ、それによってヨーを発生させて狙ったとおりのコーナリングを実現するという触れ込みだ。
だが、ボクから言わせれば意味はない。当たり前のことだがタイヤには摩擦力により発生するグリップの限界があり、それを超えてコーナリングフォースを発生することはできない。つまり100%の摩擦力を使って曲がっているときにいくらモーターでトルクを与えても、その力は路面に伝わらないのだ。
実際、ボクが試乗している限り、有効に働いていると感じたシーンはなかった。ではグリップ限界まで使えない人には効果のあるシステム、といえるのかもしれないが、グリップが余っているステアリング操作でクルマが反応するのだから、より曲がりたければ切り増せばいいということになる。
むしろフロントに重いモーターを積むことで慣性モーメントが大きくなり、前述のアンダーステア傾向になるというネガな影響が出てしまっていた。せっかくのミッドシップのよさがなく、まるでデキのいいFRのよようなクルマになってしまっているのは残念だと思う。
そういった理由から、ボク個人としてはSPORT HYBRID SH-AWDなしのリヤ駆動が理想的だと思うが、現在のパッケージでもサスペンションジオメトリーを煮詰めることで、もう少しアンダーステアを解消するなどコーナリング性能を向上することはできる。このあたりは今後に期待したい。