◆ここで負けてはホンダではない
とはいっても、そうそう簡単にさまざまなコースすべてにマッチするパワーユニットを作れるわけではない。21レースの今シーズンも残るは9戦。苦手なコースと狙えるコースがあるはずだ。
「エンジン出力をもう少し上げて行きたいと思ってますが、ハイスピードなイタリアとベルギーは相当苦戦すると思います。それ以外でいうと、比較的低速なシンガポールとメキシコがありますし、シーズンを通しては4番手のチームは目指せるのではないかと思っています」
比較的、平均速度が低い方がよさそう、ということか。
「それはもう明らかです。どこでもパワーは影響します。かといって、パワーサーキットで全然ダメと思っていない。もちろん、トップ3は別。フォースインディア、トロロッソ、ウイリアムズと比べて、ということですが、スパで全然闘えないかというとそうは思っていません。ただ、苦戦はするだろうな、と」
ドイツGPで、アロンソが、「燃費が厳しい」とコメントしたが、長谷川F1プロジェクト総責任者は、「目茶苦茶厳しかったですね」と認めた。
「かつてのF1と大きく違うのは、燃料流量の規制があること。同じ燃料流量のなかでパワーがでているというのは、燃費がいいということになる。つまりホンダは燃費が悪い、ということになのです。パワーがないから燃費がいい、のではなく、むしろ逆。メルセデスはパワーもあって燃費がいい。パワーアップを目指す=燃費も向上ということです」
パワーの序列は、メルセデスがトップに君臨している。
「パワーの序列は、まず、メルセデス、次がフェラーリ。そしてルノー、ホンダは4番目だと思います。エンジン単体でこの序列です。入れた空気でどれだけ馬力を出すかの勝負になっています」
その状況のなかで、ホンダはまだまだ開発の余地を残している。
「少なくとも車速差でいうと、ドイツGPのホッケンハイムでうちはボトム2の21-22番手でしたから。そういう視点で、“エンジンパワーでそれを挽回する”という作戦です。難しいけれどやるしかない。ここで負けている、というのはホンダとしてあり得ないですから」
厭味な質問にも真っ向から真摯に受け止め、かつ自らの現在のポジションを見極めながら、ストレートなコメントが聞けた。後半戦が楽しみである。
(写真:大西 靖・HONDA)