【インタビュー】ホンダF1の現在を長谷川F1プロジェクト総責任者に直撃! (2/4ページ)

◆開発は全方位

 トークン・エンジニアリングという言葉がある。エンジニアリングとは、『采配』と訳してもいいが、もっとも効率的な形を作り上げる作業だ。

 コストを抑制する関係から、エンジンの改良には、与えられたトークンの範囲でのみ可能になる。いわばプリペイドカードのようなトークンをどう使うかの“戦略”、それがトークン・エンジニアリングだが、F1現場での開発は我々が考えていたより、はるかに高度な形で進められていた。

 トークンの投入時期について、長谷川F1プロジェクト総責任者から、想像を超えた答えが返ってきた。

「まだ決まっていない、といってもいいですね。まずは、信頼性や出力があがるタマを確認して、実際に成果が出たら、どれをチョイスするか。まずはやってみていいのが出たら、そこに集中する」

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 つまり、全方位で考えられる開発をすべて、トークンとは関係なく並行して進め、そのなかから実戦に使える“タマ”をトークンを使って投入する、という形。F1は想像以上に凄まじい世界であることが改めて理解できた。

 前半戦の終盤の第11戦ハンガリーGPで、マクラーレン・ホンダに乗るフェルナンド・アロンソは、金曜日から始まる全セッションを7位でまとめた。メルセデス、レッドブル、フェラーリのそれぞれ2台、合計6台が磐石のトップ3を形勢している状況での7位は、セカンドグループのトップを意味する。10台だけに出走が許されるQ3のもう一段上のレベルにマクラーレン・ホンダが到達したことを示す結果だった。

Hungaroring, Budapest, Hungary. Sunday 24 July 2016. World Copyright: Steven Tee/LAT Photographic ref: Digital Image _H7I4934

 そうなると欲も出る。Q3突破から目標を刷新してもいいのではないか。しかし、長谷川F1プロジェクト総責任は、キッパリと否定した。

「それはあり得ないですね。10位を8位にするとかできるかもしれませんが、トップ3にとても届かない。ハンガリーの7位は望み得るベストポジションでしたが、ハンガリーだったから7位になれた。次のドイツGPでは8位が精一杯、安定的に10位以内に“必ず入れる”とはいえないですね」

 比較的低速のためエンジン性能がタイムに大きくは影響しないハンガロリンクだからの7位という冷静な認識だが、長谷川F1プロジェクト総責任者は、さらに厳しい評価をしていた。リタイヤの多さだ。

「ここまでに7回リタイヤしています。オーストラリアのフェルナンドの事故も含まれますし、車体系のトラブルもありますが、チーム全体での信頼性はまだまだ」

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 たしかに、結果を振り返ると、メルセデスは12戦の中でリタイヤはスペインGPの同士討ちの1回だけだ。

「次のステップでパフーォマンスを上げなければいけないけれど、性能が上がれば耐久性も厳しくなる。まだ、せめぎ合いをしなければならない段階にあると思います」

 とはいえ、時折、負けず嫌いの側面も見える。

「この2戦くらいウイリアムズが苦戦しているので、ウイリアムズくらい喰ってやりたい、という気持ちはあります。コンストラクターとして、4番目の実力を出したい、と思います。毎回7位、8位という成績を実現するためにはどうするかを考えなければいけないと思います」

Hockenhiem, Germany. Saturday 30 July 2016. World Copyright: Steven Tee/LAT Photographic ref: Digital Image _H7I8039

 徐々に進化しているマクラーレン・ホンダをみて、トップ3に追いついたら次は、と思いたくなる。しかし、越えなければならないハードルは依然大きなもののようだ。


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