出棺時の演出を考え広めの棺室を用意
その昔は桶を担ぎ、次に棺を大八車、棺車で運ぶという歴史を経て生まれた霊柩車。日本国内には6000台強の霊柩車および搬送車(ストレッチャー兼用棺台レースを装備するが、外装は普通車と変わらない)が登録されている(貨物自動車運送事業の霊柩限定)。
基本的にはその代替え、そして新規参入葬儀業者による導入などがあるが、車齢も伸びている昨今、年間の生産台数は500~600台程度だという。
霊柩車は数社がビルダーとして製作している。上の車両はカワキタのボルボV70をベースとした洋型霊柩車。ボディを140cmストレッチしている。
少し前に多く見られた宮型という装飾の施された車両は、目立ちすぎて嫌厭されていることや、法規制の面でも厳しくなるということで、現在その保有台数は700台を切っている。
それに変わって霊柩車のトレンドは、ルーフを革張りにした洋型霊柩車が主流だ(幌馬車で遺体を運んでいた名残で、ボディサイドに幌開閉のための「ランドボー」をイメージしたS字型の金具をつけている)。
エンディング産業展(8月22日~24日/東京ビッグサイト)には、光岡自動車が新しい霊柩車を展示した。その新型は、ヴェルファイアをベースにホイールベースを140㎝ストレッチした洋型霊柩車。ボディサイズは6330×1850×1930mm。
これまでの霊柩車といえば、乗用車やステーションワゴンがベースのことが多かったが、新時代の最高級リムジンを目指して、最上級のおもてなしと圧倒的な威厳と格式を持った車両をということでヴェルファイアベースの霊柩車が登場した。
国会議員や要人が乗るVIPカーにも採用されるなど、これまでと比べてミニバンに対する偏見もなくなっていることから、ミニバンでも受け入れられるだろうという判断による。参考価格として表示されているのは税抜き950万円(2.5X FFモデル 乗車定員5名)~。
室内は、セカンドシートまでを活かしており、5人乗りが可能。その後ろの棺室(棺が収まるスペース)だが、棺のサイズは210×60cmと決まっているので、このミニバンほどの広さが必要なわけではない。
葬儀の際、この霊柩車がもっとも注目されるのが出棺のとき。その場面で「もっともよい演出」をするには、このくらいの棺室空間が必要であるという。
棺室は、JRで採用されているグランクラスをイメージしている。今までにないデザインと、間接照明だけでありながら、十分以上な明るさを得られるようにしている。
光岡自動車がこの事業に参入したのは、15年前のこと(輸入霊柩車の販売はそれ以前から)。ミツオカの車両を使用した他メーカーが製作した霊柩車を見たことからスタートした。
ファッションカーとして登場したミツオカブランドの車両だけに、オーナーからのクレームもあったようだが、光岡自動車が作ったほうがもっと上級な車両に仕上がるとの意気込みでこの事業に参入。
ガリュー、リューギといったミツオカ車両の霊柩車、国産高級車ベースの霊柩車、そして各種ミニバンをベースとした搬送車(寝台車)の製作を手掛けている。
さて、光岡自動車のミニバンベースの新型霊柩車、今後の反響が気になるところだ。
(写真:青山義明)