自動運転の利便性によりクルマを売ることでなく「事故ゼロ」が目的
日産が新型セレナから自動運転技術を利用した「プロパイロット」なる装備を設定することが発表されている。それ以前にも、2013年頃から電気自動車リーフをベースとした自律走行車のデモンストレーションを行うなど、自動運転を次世代のコア・テクノロジーとして位置付けている印象が強い。
その理由は、自動運転という利便性で差別化しよう……と捉えてしまいがちだが、そうではないといえる。
まず、自動運転技術を進化させている主な理由、根本的な狙いは「交通事故を減らすこと、クルマによる死傷者を減らすこと」にある。安全で確実に移動するためのテクノロジーとしての自動運転技術は、自動車の本質的な機能を高めるためであって、けっして付加価値的な要素ではない。
現時点での自動運転技術は、SFが描くような無人運転とはレベルが異なるが、それでも人間のケアレスミスや、ちょっとした不注意をカバーできるだけの機能を持つ。こうした安全装備としての技術は、事故を減らすのに大いに役に立つ。
しかし、新テクノロジーというのはコストが上がりがちだが、すべてのユーザーが安全にお金を払うマインドを持っているかといえば、そうとは言えないだろう。
そこで、快適性を向上させる自動運転技術としてアピールすることで、そうしたコストアップへの抵抗感を軽減させるのが、セレナの「プロパイロット」といえる。こうした考え方は日産だけでなく、自動車メーカーのほとんどが持っているマインドだ。
その点において、利便性の追及として自動運転技術の実現を目指す新興企業とは、そもそも狙っている世界が異なる。クルマによって人が死傷しないことが、最大の目的なのだ。