荷室だけじゃなく後席スペースも広がっている
日本初お披露目した86シューティングブレーク。前編では、オーストラリアのデザインチーム発案の企画であったということを記してきた。今回は日本側の開発スタッフがどのような印象を得て、実際に実験車を作るまでにいたった経緯と今後の可能性をトヨタ・モータスポーツ本部・スポーツ車両統括部の岸 宏光さんに話していただいた。
「リヤをハッチバックスタイルにすることで、後席上部のヘッドクリアランスが10㎝ぐらい改善できるので、後席に人を乗せても余裕があるようなクルマにしたいというのがオーストラリアチームからの提案で、これをプロダクトプランニングとして展開してほしいという要望を受けました」
「デザイン案を日本に持ち帰り、実験車両としてカタチにしてみる段階になり、一番の課題はハッチ部分をどうするかということでした。そこで話に上がったのがレクサスCTのリヤゲートを使用するというものでした。仮に製品として世に出すとしても、既存パーツを使用するほうがベターだというジャッジからです」
「最初僕らは、モーターショーに展示するようなデザインカーをイメージしていたんですが、実験部で作るからにはキチンと走れるようにして、操安を確認できるようなものにしていくことになりました。完成までは、そこから2カ月でした。ある意味新しいことに挑戦してみたいという、スポーツ車両統括部の情熱と、実験部の賛同を得られたから誕生したクルマと言えます」
「クルマの仕様は、リヤまわりのボディ補強をして、サスペンションはザックスを装着。タイヤはノーマル86と同じ17インチを装着しています。異なるタイヤを履く案もありましたが、ノーマルとの比較も考えて同じタイヤをセレクトしています」
「テストコースを何回も走っていますが、かなり楽しい仕上がりになっています。重くなっているボディもプラスに働いているようで、適度にリヤタイヤにトラクションがかかり、安定感のある走りが得られていると思います。86のもつ走りの楽しさはスポイルされておらず、試乗したスポーツ車両統括部のスタッフはみんな笑顔でした」
「このクルマは、トヨタ社内だけで議論するよりも、メディアのみなさんや86好きの方に見てもらって、感想をもらったほうが良いということになり、このクルマの発案元であるオーストラリアへクルマをもって行きアンベールとなったわけです。実際、シューティングブレークの写真を載せた僕のFacebookには、もの凄いアクセス数があり、かなりの反響が得られました。皆さんの声が大きくなれば、商品化も夢ではないと思います」
なんと発売の可能性もあるという86シューティングブレーク。いずれにしても、こうして86の世界が広がっていくことは歓迎すべきことだ。今後の展開から目が離せない!