ゲトラグ社製のデュアルクラッチ2ペダルMT搭載
カングーに新グレードが追加された。といっても、ちょっと装備が豪華になった、というような簡単なものではない。ゲトラグ社製のデュアルクラッチ2ペダルマニュアルトランスミッション、6速EDCが搭載されたのだ。これまでは6速マニュアルトランスミッション(MT)と4速オートマチックトランスミッション(AT)というラインアップだった。
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カングーはこれまで、ライバル不在のオリジナリティ溢れるコンセプト、バリエーション豊かな使い勝手、唯一無二のデザインなど、カーライフを楽しむクルマという認識をもっていた。だからファンにとっては4速しかないオートマも、マニアックなMTという選択も“味”として好意的に受け入れられるのだろうと思っていた。
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ところがカングー ゼン EDCは乗った瞬間から上質さが際立ち、クルマとしての完成度の高さが全面に出ている。まずはDモードで走行を開始。アップシフトがじつにスムースで、信号からの発進、加速シーンでギヤチェンジを意識させない。
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1.2リッターのダウンサイジングターボエンジンは、発進直後の低回転域から十分なトルクを発生し、さほどアクセルペダルを踏み込まなくてもスルスルと加速していく。走行のスムースさは上質さに大きく影響することは言うまでもない。
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そして静粛性の高さだ。風切り音やロードノイズなど全般的に音が小さいので、音が出ていないのではなく、車内への侵入が少ないのだと推測できる。加えてトルクフルなエンジンゆえに、一般道レベルなら低い回転を維持したまま走行できるため、その点からも音に関しては有利になる。試しにアクセルを踏み込んでエンジン回転を上げてみると、それなりにエンジン音は聞こえつつも、基本的な静粛性が高いことが確認できた。
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そして何より走りの質が高い。今回試乗した一般道はアップダウンがなくフラットだが、路面はかなり荒れている。しかしカングーは細かい突き上げ、さらに大きなギャップの乗り越えも、ドライバーに不快な振動を伝えてこない。
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やや引き締められた足まわりが、キチンと路面からの入力を吸収しているのだ。また、ワゴンにありがちな荷室が空の状態だとリヤが跳ねるような動きがない点も好印象。これならリヤシートに子供や高齢者を乗せるようなファミリーユースでも文句は出ないだろう。
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