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【意外と知らない】トランスミッションが多段化する理由

【意外と知らない】トランスミッションが多段化する理由

燃費を良くするために変速段数は増え続けている

 いまや乗用車向けのオートマチックトランスミッションでも10速ATの噂が聞こえてくるなど、多段化のトレンドは止まらない。それは遊星歯車を使ったステップATでもデュアルクラッチを前提としたDCTでも同様だ。ひと昔前のATといえば3速や4速だったが、いまや6速ですら少なく感じるほど。果たして、なんのために多段化は進んでいるのだろうか。

 まず、最初に誤解を解いておきたいのは、多段化=クロス化(隣り合わせたギヤの変速比の差が小さいこと)ではない。たとえば9速ATなどと聞くと、いかにも回転のつながりがよさそうに思えるが、そうとはいえない。じつは、多段ATといってもステップ比はそれほど変わっていないのだ。

 では、何が目的なのかといえば、変速比幅と呼ばれるギヤ比のカバー範囲を広げることが狙いだ。変速比幅は、もっとも数字の大きい変速比(1速)をもっとも数字の小さい変速比で割ることで導き出されるもの。かつては4~5程度の数字だったが、いまや10に近づいている。

 たとえば、変速比幅が5を示す程度の5速ATを想定すると、変速比幅が10の10速ATは5速ATにロー/ハイレンジを与えたくらいのカバー範囲を持つ。

 では、変速比幅を広げるメリットといえば、それは燃費がよくなることに他ならない。エンジンの評価ポイントとして最大熱効率が競われたこともあったが、今のエンジンは熱効率の優れているエリアは限定される。

 つまり、変速比幅を広げ、多段化することで、幅広い速度域(といっても世界のトレンドは上限130km/h程度だ)において、常に熱効率に有利な領域を使いやすくなる。最近のクルマが高速走行時でもエンジン回転が上がらないようにセッティングされているのは、まさに燃費(効率)を向上させるためなのである。

 こうした変速比幅を広げることがトレンドだとして、そのために向いているといえるのは遊星歯車を組み合わせたステップATだ。ベルトやチェーンを2つのプーリーにかけて変速するCVTは、ほぼプーリーの軸間距離が変速比幅の限界となるため、物理的に制限される面がある。

 そのために副変速機を用いているタイプもあるが、まだまだ主流とはなっていない。また、DCTはその構造から変速ギアを段数分だけもつ必要がある。変速ギアは強度が求められるため重く、多段化というのは重量増に直結する。

 一方、ステップATは遊星歯車式の組み合わせ次第で重量をそれほど増やさずに多段化・変速比幅の拡大がしやすいのだ。

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