シフトチェンジ以外は触らないのが正解
いまやめっきり少数派のMT車。それだけにこだわりを持って、乗っている人も多いだろうが、基本的にMTのシフトレバーは、シフトチェンジするとき以外は、握ったり、触っていたりしないというのが正解だ。主な理由は3つある。
①できるだけ、常に両手でステアリング操作をしたい
ドライビングポジションの要、ステアリングの握り方は、9時15分が基本。両手で、円形のステアリングの中心を通る最大径の両端を握るのが、一番力まずにステアリング捌きをするためのコツ。
咄嗟のときに、ステアリング操作がコンマ1秒でも遅れれば、リスクは何倍にも膨らむので、シフト操作の必要がないときは、きちんと両手で保舵しよう。
②ミッションにストレスがかかる
内部でたくさんのギアが回転しているミッションは、当然ある程度のバイブレーションを発生する。そのミッションケースは、ゴム製のミッションマウントを介して、ボディに固定されている。ここをリジット化すれば、シフトフィールがよくなるかもしれないが、その分、ミッションやボディへのストレスは大きくなる。
振動は大きすぎても困るが、抑え込んでしまうのもよくない。どこかで上手に逃がしてやることが肝要なのだ。走行中のシフトノブを見ると、微妙に振動しているはずだが、ずっとシフトノブを握っていると、この振動の行き場がなくなり、ミッション本体やリンケージにストレスをかけることになってしまう。
また、シフトレバーは少し動かすとスプリングの働きで、ニュートラルに戻ろうとする力が働く。ずっとシフトノブに触れていると、何かの拍子でレバーが動き、思わぬ時にシフト抜けする可能性があるのでよろしくない。
余談だが、その昔、日本自動車研究所の谷田部テストコースで、チューニングカーの最高速テストが盛んだったころ、高速周回路の45度バンクに入ったときに、シフト抜けするクルマがときどきあって、最高速アタックのときは、助手席にスタッフが乗り込んで、シフトが抜けないように押さえていた、なんてこともあった……。
③迷い箸のようで、かっこ悪い
コーナーや状況に応じて、最適のギヤを選ぶのも、ドライビングスキルのひとつ。ずっとシフトノブに触っているということは、ギヤ選びに迷いがあるように見えて、かっこ悪い。
ドライビングは決断力も大事。ギヤはパッと選んで、片手を遊ばせておく余裕があるなら、シフトノブではなく、助手席の恋人の手でも握っていた方がいいんじゃないの? とお節介。