形式ごとに特性はあるがそれだけでクルマの性能は語れない
そのダブルウィッシュボーンは、タイヤ&ホイールの固定されるアップライトと呼ばれるパーツを上下のアームで支えて位置決めするもので、ストロークしてもタイヤと路面の関係(キャンバー角)が変わらないのが利点とされている。が、それは上下のアームが同じ長さであるときの話で、現在のようにロアアームが長くなっているレイアウトでは、それなりにキャンバー変化は発生する。
※マツダ・ND型ロードスターのダブルウイッシュボーン式フロントサスペンション
それでもマクファーソンストラットに対して、アドバンテージがあると言われるのは、ダンパーがサスペンションアームを兼ねていないために動きがスムースであるという部分が大きい。
余談だが、アフターパーツなどで「倒立ダンパー」という構造もあるが、これはダンパーの剛性を高めるためのものであって、マクファーソンストラットでは有効だが、あえてダブルウィッシュボーンに倒立ダンパーを使うメリットはないといえる。
名前のとおり、複雑な事情を持つのがマルチリンク。これはストラット、トレーリングアーム、ダブルウィッシュボーンという各方式に分類されない、複数のサスペンションアームを持つ独立懸架式サスペンションの呼び名。
その内容としてはトレーリングアーム式をベースに横方向にアームを追加したようなものから、ダブルウィッシュボーンの上下アームをそれぞれ分割したような形状まで様々で、マルチリンクという言葉だけでは、どのような素性を持つサスペンションなのか判断できないといえる。
とはいえ、アームが多く構造が複雑なのはコストアップ要因であり、それはサスペンションにコストをかけたという作り手の意志を感じるという点において注目に値するといえるだろう。
逆にいうと、カタログにどのようなサスペンション形式が書かれていたとしても、それだけで車両としてのパフォーマンスがわかるほど単純な話ではない。
さすがに前後リジッドともなれば舗装路でのハンドリングにアドバンテージが少ないことは想像できるが(それを補ってあまりあるラフロードでの信頼性がある)、マクファーソンストラットやダブルウィッシュボーンといったサスペンション形式によってハンドリングや乗り心地を想像することは難しく、あまつさえ優劣を判断しようとするのはおすすめできない。