自国向けのクルマには「国の環境」が影響している
クルマは、生まれた「国の環境」の影響を大きく受けているという先入観を持っている自動車好きは少なくないだろう。いわゆる「お国柄」というものだ。
たとえばアメリカ車といえば「大きくてゆったり」、フランス車は「石畳の道路が育んだ座り心地のいい椅子」、イタリア車は「きびきび走るコンパクト」と「スーパーカー」いったところだろうか。また、近年のモーターショー情報などから、中国といえば「ホイールベースを延長したリムジン」へのニーズが強いという印象が強いかもしれない。
とはいえ、日本車に対してよく言われる「スライドドアのミニバン」というイメージも、実際の販売台数を見るとかつてほど多くはない(スライドドアの軽自動車は売れているけれど)ことを考えると、各国の自動車市場やメーカーに対する印象も、実際はそこまで明確に色分けできるものではないといえる。
実際、多くの自動車メーカーが展開しているグローバルモデルは、新興国から成熟市場まで地域やユーザー層を問わずにカバーすることを考慮しているわけで、自国向けの商品の影響を受けているとはいえない。
具体的にいえば、アメリカではピックアップトラック、日本では軽自動車という、その国における制度から売れている独自のカテゴリーはあるが、それをそのまま世界展開しているわけではないのである。
最近でいえば、ドイツの高級車にプラグインハイブリッドが増えているのも、同国における制度の影響を受けた一例である。また、生産拠点だけでなく開発組織もグローバル展開している現在においては、ある自動車メーカーの本社が置かれているお国柄を、そのメーカー全体の商品キャラクターに当てはめるのには違和感を覚えるのも事実だ。