ル・マンを制覇したのは2号車ポルシェ
2016年ル・マン24時間レースが行われ、残り3分30秒までトップを走っていたトヨタがまさかのトラブルで初優勝を逃した。
トヨタはル・マンのみに照準を合わせてきたといっても過言ではない。世界耐久選手権(WEC)の1レースに組み込まれているル・マン24時間レースだが、F1モナコGP、インディカーシリーズのインディ500と共に、世界三大レースに数えられることからもわかるとおり、その「重要さ」は別格といってもいい。
実際トヨタは2014年にシリーズタイトルを獲得している。にもかかわらず、2016年5月20日に行われたル・マン参戦へ向けた発表会では「トヨタよ、敗者のままでいいのか。」とのキャッチフレーズを掲げた。つまりル・マンを勝つためだけにマシン開発を行い、熟成してしてきたことを公言したのだ。
予選はディフェンディングチャンピオンのポルシェが1位、2位、トヨタの6号車が3番手、5号車が4番手、5位、6位がアウディという順位となった。
スタートは雨、セーフティカー先導でスタートし、およそ50分間後にセグリーンフラッグが振られて事実上のスタートとなった。
アウディがタービン交換、ポルシェにウォーターポンプの交換といったトラブルが出るなか、トヨタはマイナートラブル程度に収まり順調に走行。折り返しを迎える前から、小林可夢偉選手等が操る6号車がトップを走行。ナイトセッションあたりから1位、2位を走行する盤石の体制でレースを進める。まさに王者のようなレース展開だった。
その後セーフティカーの導入で差が詰まり、5号車が6号車を躱してトップに立つが順位は1-2のまま。終盤はトヨタ2台とポルシェの2号車の3台が同一周回で激しいバトルを展開。小林可夢偉選手がスピンを喫しグラベルに飛び出すなどのアクシデントもあるなか、5号車は安定した走りを披露。
しかし残り6分で盤石に見えたトヨタを悲運が襲う! ステアリングを握る中嶋一貴選手が「ノーパワー」と無線で叫んだ。そして残り3分20秒でマシンを停めてしまった。
トヨタがワークス参戦を開始したのは1987年からだ。片山右京さん、土屋圭市さん、鈴木利男さんのドライブで総合2位に入ったこともある。しかし優勝には届かないまま、1999年に参戦を休止した。そして2012年、ハイブリッド技術を引っさげて13年ぶりにル・マンへと戻ってきたトヨタ。なぜル・マンの女神は微笑まないのか? トヨタに足りないもの、それは運だけだと思わざるを得ない、そんなレースだった。
(写真:大西 靖)