クランクシャフトにかかる回転力を表す数値
エンジンスペックで、気になるのは最高出力と最大トルク。最高出力に関しては前回【今さら聞けない】エンジンパワーの「馬力」ってどのぐらいの力?」で説明したとおり。今回は、エンジン自体の力強さを感じるスペックとして認識されている「トルク」について説明しよう。
かつてはkgf-mという単位が使われ、現在ではSI単位によるN・m(ニュートンメーター)となっているのがトルクの項目だ。それぞれの単位を換算するには次の係数による。
1kgf-m=9.8067N・m
N・mを昔ながらのkgf-mで理解するには、およそ1/10と考えるとイメージしやすい。
さて、いずれもトルクを示すために、重量の単位であるkgfやN(ニュートン)に対して、m(メートル)をかけているが、これはまさに掛け算。トルクというのは「重さ×長さ」によって導き出されている。たとえば、1N・mというのは、1mの長さの棒の一方を軸として、もう片方の端に1Nの力をかけたときに軸にかかる回転力という風に見ることができる。
エンジンスペックでいうトルクは、クランクシャフト軸によって生み出す回転力のこと。そして、基本的にエンジンベンチ(試験機)はトルクと回転数を計測している。そして出力というのは、トルクと回転数を掛け合わせ、そこに係数を使って処理したもの。
つまり最高出力というのはエンジンのレブリミット(最高回転数)を稼ぐことができれば高められる傾向にある。逆にいえば、仮にトルク感のないエンジンでも回転を上げることができればスペック上の出力は高めることができる。だからこそ、エンジンの力強さを知るには最大トルクの数値が重要となってくるのだ。
なお、カタログに記載されている数値はラジエータやマフラーなどを車載状態とした上で、エンジンベンチで計測したトルクである。もちろんアクセル全開状態で、ターボ車であればブーストはフルにかかっている状況といえる。そのため、ハーフスロットル以下を使うような街乗りでは、同じ回転数であっても、カタログスペックと同じトルクが出ているわけではない。
ちなみに、N・m(ニュートン・メートル)の先頭のNは大文字で記すのがルール。小文字で書くとnm(ナノメートル)という長さの単位と見間違えてしまうので注意したい。