低いノーズとライト高さを両立するためのアイディア
かつてスポーツカーには欠かせないと思われていたアイテムが「リトラクタブルライト」。普段は隠れているヘッドライトが点灯時のみボディからせり出してくる様子は、そのギミックだけで心を昂ぶらせるものだった。
国産車ではトヨタ2000GTが初採用した後は、採用例が途切れたが、1970年代のスーパーカー・ブームで一躍有名になったフェラーリ512BBやランボルギーニ・カウンタック(本来の発音は「クンタッチ」に近いともいう)といったマシンがリトラクタブルライトを採用していたことも、スポーツカーの要素として認識された理由といえるだろう。
さて、こうしたリトラクタブルライトはカッコイイから生まれたのかといえば、それだけではない。もちろん、デザイン的な要素も無視できないが、基本的には2つの法規を満たすために生まれた苦肉の策という面がある。
まず1つ目のルールは、アメリカで1960~1980年代に厳しく実施されていた「規格型ヘッドライトの使用義務」である。時代によっては規格化された丸型シールドビーム以外のヘッドライトは使えないという厳しい法規であった。当時の北米仕様に丸目ヘッドライトを使ったクルマが見受けられるのは、これが理由だ。
これは広大なアメリカにおいて、どこでヘッドライトが球切れしても、即座に購入できることを狙ったルールで、それ自体はユーザーのためになるものだが、スタイリングについては制約でしかなかった。
また2つ目のルールとしては、ヘッドライトの位置がある。規定による高さと低いノーズを両立するには、リトラクタブルやポップアップにより点灯時だけはヘッドライトを高い位置に持ってくる工夫が必要になった。
次は日本車でも続々と登場したリトラクタブルヘッドライト