ドリフトNG! F3が要求する繊細な走り
ドリキンこと土屋圭市さんといえば、多くのひとがグループAなど、いわゆるハコ車でレースをしているイメージが強いだろう。土屋さんがクラス優勝を果たすなど大活躍をしたル・マンのマシンも広義ではハコ車だ。しかし土屋さんは過去にフォーミュラにも参戦しているのだ。
「全日本F3選手権に出ていた。1989年から数年走ったね。当時はバブル経済で、まだレース業界が元気だったこともあって、『グループAに参戦しながらこちらも乗らないか?』っている話をもらった。新しい経験ができるかなと思って参戦したんだ」
クルマが一番の趣味、何でも好きという土屋さんだが、F3を走らせてみた結果は意外な感想だった。
「ハッキリいうと俺には合わなかったね。タイヤのグリップを目一杯使って走るという意味ではハコ車も同じだけど、F3はとにかく繊細に走らせる必要がある。とにかくタイヤを滑らさないようにね。外から見ていてもわかると思うけれど、クルマが暴れるなんていうこともほとんどない。ドライバーとして、新たなチャレンジという意味では面白いけれど、お客さんはつまらないだろうなって思ってた。例えばグループAで、星野一義さんが暴れるクルマをねじ伏せているのを見ると、単純に凄い! って思えるハズ。F3にそれはないよね」
ドライビングの引き出しは非常に多い土屋さん。それでもフォーミュラはまったく違う「技術」が要求されたという。
「まずステアリングの切り方、そしてGのかけ方が違う。フォーミュラは荷重移動が少なく、例えばブレーキングひとつをとってもタイヤをつぶすのが難しいよね。クルマ自体も軽いからストロークが少ないということも要因だ。初めてテストしたときは1周で2〜3回もスピンしたよ。すぐにドライビングを合わせていったけどね」