斬新なアプローチで完成した面白い1台
2015年3月のジュネーブモーターショーで世界初公開されたPHIARO(フィアロ) P75 CIPHER(サイファー)が5月28日29日に長野県にある高峰高原へ通じる高峰チェリーパークラインで開催された「浅間ヒルクライム」へ出走した。
このモデルを制作したのは、「フィアロコーポレーション」。創業は1939年。産業用機械の木型(マスターモデル)の制作からスタートし、自動車関係における試作研究段階のモデルの開発及び製造を行なう、埼玉県新座市にある開発支援会社である。パワートレインを除く車体及びその内外装を中心とした、モーターショーの出展車やコンセプトカー作りの専門会社だ。
自分たちが実際にどのくらいのものが作れるのか? ということで、創業75周年を記念して制作されたのがこのP75サイファーである。サイファーは「CAEインテグレーテッド・フィアロ・エンジニアード・レーサー」の略である。設計の現場ではコンピュータでの開発も進んでいる昨今、解析・衝突・風洞・剛性といった要件もフィアロ社内でデータとしては取れている。机上の数値と実際との相関関係を確認したいという思いもある。
自らのデザインで製作したこのクラブマンレーサーのコンセプトカー。2014年末に制作され、2015年3月のジュネーブショーに出展。そのジュネーブショー以後は、国内のビジネスショーやイベントの現場にも展示している。なんとこの浅間ヒルクライム前日まで開催されていた「人とくるまのテクノロジー展2016(25日から27日までの3日間、神奈川県・パシフィコ横浜にて開催)」にも出展。
画像はこちら この「人とくるまのテクノロジー展」の「共和電業」のブースで、サイファーへは、ひずみゲージ、カプセル型高温ひずみゲージ、グリップ式操舵力計などの各種計測システムが実際に装着されていた。
トヨタ・ヴィッツRS用の1.5リッターエンジンをミッドに搭載した後輪駆動。全長3640mm×全幅1750m×全高1045mm。ホイールベースは2350mm、車重は596kg。P75サイファーをドライブしたレーシングドライバーの白坂卓也選手は「この会社が初めて作った一作品目の車両なのに完成度はすごく高いです。ミニサーキットで楽しめる一台。エンジンを載せ換えても面白いだろうし、やりたいことがいっぱいあります。熟成していきたいですね」とコメントしてくれた。「車両はシャーシがオーバースペックなので、それを最適化して軽量化していきたいですね。」と岩崎俊裕社長も語る。
クルマ作りのベテランがいる会社ではない。そのためクルマ作りのアプローチが違い、とても変わったものを作ることができるはずだ。今回のクルマも何かレギュレーションがあるなかで制作したクルマではないだけに、次は何が我々の前に登場するのか、(とくに現在次の車両の計画はないようだが)今から期待したい。
(写真:青山義明)