そこらのスーパーカーよりもインパクト絶大なクルマたち
クルマの第一印象を決定づけるのは、何といっても「顔」だ。カーマニアならデザイン以外にも、スペックやハンドリング、ボディ剛性など様々な要素がファーストインプレッションになり得るが、強烈に個性的なフロントマスク、つまり変顔は老若男女すべての脳裏に焼き付いて離れなくなる。
また、変顔グルマは酷評される一方、普通に美しいクルマよりもはるかに印象が強く、万人の記憶に残りやすいため、その意味では勝ち組といえなくもない。
今の時代は空気抵抗や歩行者保護などの安全性を徹底追求せざるを得ないため、突拍子もない変顔グルマは出現しにくくなっているが、過去を振り返ると「歴史的な変顔グルマ」として称える価値のあるクルマは少なくない。ここではその代表作を思い出してみよう。
①【光岡・オロチ】
世界で唯一の「ファッションカー」というコンセプトから生まれた奇跡の一台。パッと見のインパクトの強さでフェラーリやランボルギーニを凌駕できる威力のある日本車はオロチをおいてほかにない。強烈な見た目とはウラハラに、走行性能や走行フィールは極めてフツーというギャップのデカさも凄まじい。意外に玄人筋からは好評で、高須クリニックの高須院長など著名人オーナーが多いことでも知られ、商売的には成功作といえる。
②【フィアット・ムルティプラ】
顔の上にもうひとつの顔が乗っかったような異様な姿には、イタリア人のデザインセンスの奥深さ、いや不可解さをこれ位以上なく思い知らされたものだ。このセンスにビビったのは極東の我々のみならず、本国でも醜いと酷評されたが、マイナーチェンジで超凡庸な顔つきになった途端、「前の方が良かった」とガッカリされた悲運っぷりも印象深い。イタリア車らしくハンドリングは秀逸なことでも知られ、エンスーからは意外に高評価だ。
③【フォード・エドセル(1959年~)】
1950~1960年代のアメ車は超イケイケデザインのオンパレード。空力や歩行者保護性などは微塵も考えず、ただひたすら派手で目立つことを追求したモデルだらけだが、その中でも際立つ変顔グルマがエドセルだ。創業者ヘンリーフォードの息子の名を採用したほどの入魂開発モデルにもかかわらず、当時のアメ車の常識をもってしても個性的すぎて「駄馬の首」と蔑まされ、発売から1年も経たずしてフェイスリフトを余儀なくされた。
④【TVR・タスカン(2代目)】
エンスーの国イギリスでは、バックヤードビルダーと呼ばれる規模の小さな工場が生産するオリジナリティの高いスポーツカーが数多く誕生。そこから自動車メーカーと呼べる規模に成長したTVRのラインナップはスポーツカーの王道的なデザインが多いが、2代目タスカンには突然変異的な変顔が与えられた。超パワルフな4ℓの直6エンジンを収めるための長~いノーズに配置された縦3灯のライトは、なんとも不気味な雰囲気を醸し出した。
⑤【スバル・インプレッサスポーツワゴンカサブランカ】
ヴィヴィオのレトロ顔ビストロに続き、サンバーでもレトロ顔が大ヒット。空前のレトロ顔ブームを創出したスバルは、その勢いでインプレッサスポーツワゴンにもレトロ顔バージョンを設定したが、WRCでの大活躍で戦闘マシンとしての人気を確立させていたインプレッサとレトロ顔の相性は最悪。サッパリ売れず、インプレッサ史上最悪の駄作と酷評されるハメに。今ではカスタマイズのネタとして一部で人気となるなど、評価は逆転している。