今ドキのクルマにはほとんど意味がない!
あと1カ月もすると、うっとうしい梅雨の季節。この季節になると、ガソリンスタンドなどで、「水抜き剤」を勧められる。そもそもガソリンに入れる「水抜き剤」は、湿気が高かったり、寒暖差の激しい季節になると、燃料タンク内の空気中の水分が結露して、その水分がタンクの底に溜まって(水はガソリンよりも比重が重く、水と油なので混ざらず底に溜まる)、タンクが錆びてしまう。そうなる前に溜まった水分をケミカル剤で除去しましょう、というのが、水抜き剤のセールストークだ。
この水抜き剤の成分は、「イソプロピルアルコール」という親水性のアルコール。これと水分が混ざると水分が乳化し、しかも親油性もあるので燃料と一緒にエンジンに送られ燃焼し、タンク内の水分が排出される、という理屈なのだが……。
はっきり言って今どきのクルマの燃料タンクは「樹脂製」が主流。さらに金属製のタンクでも防錆コーティングが施されているので、タンク内が錆びる心配はほとんどない!
オマケにフューエルポンプは、燃料タンクの底面から燃料を吸い上げるように設計されているので、タンクの底に水分だけが溜まっているということは、ちょっと考えられないシチュエーションだ。
ひと昔前のオートバイに乗っていた人だと、燃料タンクが錆びて穴が開いた、なんて経験もあるかもしれないが、少なくとも平成以降のクルマなら、燃料タンクが錆びる心配はないだろう。
そしてタンク内の結露ということを考えるなら、常に燃料を満タンにしておけば問題なし。それどころか、アルコール類はゴムや樹脂を劣化させる恐れもあるので、燃料に対する添加濃度(「満タン時に1本」などと指定されている)を守らないと、かえってトラブルの元になる。
というわけで、水抜き剤は、現代のクルマの場合、有効度が高いケミカルとはいえない。期待できるのは、プラシーボ効果程度。それでも入れておきたいという人は、添加濃度を厳守してドウゾ。