走りだけではなく強い安全思想がみえる!
スバルが水平対向エンジンの生産を開始して今年でちょうど50年。1966年5月14日にスバル1000へ搭載されて以来、スバルのコアテクノロジーとしてなくてはならない存在だ。
水平対向エンジンと並び、スバルを特徴づける技術のひとつがAWD。水平対向エンジンと組み合わせたシンメトリカルAWDは、現行スバル車のほとんどが標準装備としている。
古くはトヨタやフォルクスワーゲンも採用していた水平対向エンジンも、現在では国産車はスバルだけ。世界的に見てもスバルのほかにはポルシェだけが採用し続けている極めて稀なパワーユニットである。
スバルがなぜ水平対向エンジンにこだわるのか?それはこのエンジンが生まれながらに持つ特性こそが、スバルが考える理想をもっとも合理的に、そして高いレベルで実現できるものであるからだという。
直列エンジンや、V型エンジンでは成しえない特徴として優れた回転バランスや、少ない振動。さらには低重心による優れた走行安定性に加え、衝突安全性能への貢献が主な特徴だ。
水平対向エンジンは、クランクシャフトを中心に水平かつ左右対称にピストンを配置するため、直列エンジンやV型エンジンのピストンが上下方向に往復するのに対し、水平対向エンジンはピストンが横方向に往復。ピストン同士が互いの慣性力を打ち消しあうため、振動を抑えることができるのだ。
また、一般的な直列やV型よりもエンジン全高が低く、低重心となっている。低重心になるということはクルマが安定し、ハンドリング性能が高まる。例えば人間でも、揺れる電車の中では立っているときはつり革などに掴まっていないと不安定になる。極端な話四つん這いでいたほうが安定することを想像してもらえばわかりやすいだろう。
加えてスバルの水平対向エンジンはスバル1000の時代からオールアルミ製。軽量・コンパクト・低重心というアドバンテージをも持つ。これにより高い走行安定性とハンドリング性能を実現し、走りの楽しさに貢献しているのだ。
そして、もうひとつ忘れてならないのが衝突安全性能。エンジン本体の全高が低いため、スバル車は前面からの衝突の際にエンジンが車体下へ落ちる構造となっている。これにより車室内へエンジンが入り込むことがなく、乗員を守るという水平対向でないと成しえない特徴もある。すべてにおいて安全が最優先される設計思想ではなくてはならない特徴といえるだろう。
水平対向エンジンと同じく、スバルがこだわり続けるのがAWD。高速走行や濡れた路面、雪道などあらゆる路面状況で気持ちよくクルマを走らせられることがAWDの特徴だ。スバルはAWDを水平対向エンジンと組み合わせることで左右対称一直線のパワートレーンのレイアウトとなる「シンメトリカルAWDと」なっている。これにより、4輪にバランスよく荷重がかかるためタイヤがしっかりと路面に接地、駆動力を無駄にしないため高い走破性を実現している。
また、常に4輪に駆動力をかけるスバルのAWDはスタンバイ方式と異なり、フルタイムAWDでは、駆動方式が切り変わるために起こる挙動変化がなく、いつでも安定した走りを可能としている。スバルのこだわりは「滑ってから制御」するのではなく、「滑らないように制御」するのである。ここにもスバルの安全へのこだわりが込められているといえるだろう。
水平対向エンジンやシンメトリカルAWDにこだわる理由は、何より安全であるから。そしてその根源ともいえる「走りを極めると安全になる」という設計思想が安全で楽しいクルマを作り続ける原動力となっているといえる。
スバルの追求する「安心と愉しさ」は、まさに水平対向エンジンとシンメトリカルAWDの組み合わせで実現するのだ。