三菱自が日産アライアンスファミリーで生まれるシナジー効果
予想通りか、急転直下か。4月20日に日産と三菱自動車の軽自動車(DAYZシリーズ、eKシリーズ)の燃費不正問題に始まった業界再編の流れだが、日産が三菱自動車の発行済株式の34%を2370億円で取得するという形となった。
2011年に軽自動車の共同開発をはじめた段階から、パートナーシップの発展は考慮していたというが、傍目には認証取得時における不正問題によって窮地に立つことになった三菱自動車を日産が助けるという風にも見える。
一方で株価が下落したことにより、企業価値に対して、お買い得だったという面も否めない。記者会見における日産CEO カルロス・ゴーン氏の笑みには、そうした意味合いもあったからかもしれない。なにしろ不正問題が表に出る前の三菱自動車の株価は800円台であったが、日産が新規に取得する三菱自動車株は、一株あたり468円52銭(予定)なのだ。
しかしながら、本当に企業価値としてお得な投資になるかどうかは、今後の日産主導によるリーダーシップの如何によるというのもまた事実だ。今回の株式取得により、日産は三菱自動車の筆頭株主(34%)となり、取締役会会長をはじめとするボードメンバーを、その議決権ベースに比例した人数だけ推薦することになるが、34%という比率は、かつて三菱自動車を傘下に収めたダイムラーのそれと同じ。
結果的にダイムラーをしても体質を改善できなかったことを考えると、日産が経営の主導権を握ったからといって、容易に体質を変えることができるとは限らない。
また、日産のアライアンスファミリーとしてシナジー効果(購買、プラットフォーム共有化、生産拠点の共用)などが期待されるが、日産と三菱の得意としている領域は、補完しあうというよりは、かぶっている部分が多いようにも思える。
わかりやすい例でいえば、タイで生産したコンパクトカーを日本に輸入して販売しているのは、日産(マーチ)と三菱(ミラージュ)であるが、市場規模を考えると、どちらか一方で済むわけで、シナジー効果を生み出す前に、ゴーン流のコストカット、リストラクチャリングが必要と思える。
とはいえ、電気自動車においてはトップランナーといえる両社の資本業務提携は、バッテリーの開発リソースなどにおいて、大きな意味を持つ可能性は大きい。また、トランスミッションの大手サプライヤーであるジヤトコは、両社の由来するAT事業が合併して現代に至るという経緯があるなど、意外に技術的な親和性も高いといえる。
三菱自動車の走行抵抗値に関する不正に関してもクリアになっていない段階であり、シナジー効果を云々する前に『課題に直面している三菱自動車の支援』が最優先事項であるが、電動車両を軸としたアライアンスが生み出す次世代EVやPHVの可能性、さらにいえば充電インフラのよりいっそうの整備に期待したい。