間違いなく高いオイルを入れたほうがいい
メンテナンスフリー化やブラックボックス化が進んで現代のクルマはオーナーが手を入れにくい。しかし油脂類の交換は、いまだに残された、オーナーによるメンテが必要な部分だ。とくにエンジンオイル交換は定期的に行なわないと、エンジンの調子に大きく左右するし、燃費なども落ちてしまうので、いいことはない。
で、交換作業を自分でしないにしても、何のオイルを入れるかを選ぶことは多いだろう。その際に困るのが、どれを選べばいいのかということ。棚にズラリと並んだなかから、自分でベストを探せる人はほとんどいないだろう。結局は店員の薦められるままか、予算に合わせてといった程度だ。
価格も雲泥の差がある。リッター5000円から、4リッターで1200円なんていうのもある。もちろん同じエンジンオイルなのだが、その差はどこにあるのだろうか。
まず違うのが、ベースオイル。ご存じのように、エンジンオイルのベースになるのは鉱物油か化学合成油で、このふたつをブレンドした半化学合成油などというのもある。値段は基本的に鉱物油が安くて、化学合成油は高い。
しかし現在、じつはこのふたつで分けられない状態になっているのだ。売り場でよく見てほしい。100パーセント化学合成油と全合成油というのがあり、知らないと同じに思えてしまうが、じつは別モノ。ベースオイルの分類は、専門的にはグループで分けられて、100パーセント化学合成油はグループⅣかⅤ。一方、全合成油はグループⅢになる。ちなみに鉱物油はグループVだ。こうやって、分類するとわかりやすいのだが、わかりにくい表示がされているのは事実。なかには擬装的にあえて紛らわしくしている例もある。
では、全合成油はなにかというと、100パーセント化学合成油はイチからの化学薬品なのに対して、鉱物油を化学的に分解して作り直したものと思ってもらえればいいだろう。なので、性能面も優れているし、価格も安めと、一番オススメのベースオイルだ。良心的なオイルメーカーはウエブで細かいベースグレードを明記しているし、缶に表示していることもある。
高いオイルというのは、ベースオイルにプラスされる添加剤も高価だ。ホントに高性能な添加剤は世界で数社しか作れないモノもあって、使えば当然、性能も上がるが価格も高くなる。ただ、こちらもあやふやな世界で、高いからといってホントに高性能な添加剤が使われているとは言い切れないのもまた事実……。
とりあえずいえることは、安いオイルは性能もそこそこだということ。擬装うんぬんは別として、薬品の塊であるので、コスト=価格=性能だ。ではよく聞かれる、「安いオイルをまめに交換する」のと「高いオイルを長く使う」のではどっちがいいかというのは、説明するまでもなく、高いモノを長く、メーカーの指定(最近は取り扱い説明書の指示通りでかまわない)で交換するのが一番だ。
安いモノはしょせん内容も価格なり。初期性能がよくて、モチが悪いからというイメージだから、こういう選択バナシが出てくるのだろうが、じつは安いモノは初期性能もそこそこなのだ。たとえていうなら、テンプラを揚げるのに、安い油で最初に揚げたものは美味しいだろうか? 確実に、最初から美味しくない。少し使えば酸化して、色は真っ黒、変に油臭くもなる。一方、高い油は、揚げ始めも美味しいし、たくさん揚げても、凄くまずくなるのは長く使ったとき。エンジンオイルもそういうことである。