0-100km/h加速5秒切り! 凄過ぎる中国PHVの実力
BYDのプラグインハイブリッドSUV「唐4.9S」を、中国北京にある「鋭思サーキット」で試乗した。BYDとは、いち早く中国で電気自動車を発売したことで有名な中国の民間自動車メーカー。EVのパイオニアとして、今度はプラグインハイブリッドカーをライバルに先駆けて市場投入してきた。現在中国国内では人気モデルとのことだが、そのできばえや如何に?
BYDは前述のとおりいち早くEVを市販したことで有名なメーカー。中国国内のEV販売台数はなんと6万1722台とトップシェアを誇るという(BYDカタログより)。EVからプラグインハイブリッドの世界に入門してくるあたり、少し三菱に似ている。ちなみに最近の同社は、車名にかつての中国王朝の名称をつけている。「唐」のほかには「宋」「元」「秦」など、いかめしい名が並ぶ。日本だと「日産・江戸」「三菱・室町」みたいな感じか。
パワートレインは2リッター直4ターボ(205馬力/32.6kg-m)+2モーター(それぞれ150馬力/20.4kg-m)で、トランスミッションは6速DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)だ。後輪にもモーターを搭載した4WDで、バッテリーは乗車スペース下に収めている。ちょうど三菱のアウトランダーPHEVと似たレイアウトを採用している。システム最高出力は505馬力、最大トルクは73.4kg-mとスーパーカー並のスペックを誇る。
インテリアの作り込みはいい。バックビューモニターやクリアランスソナーなど、日本車並みの装備をもつ。メーターはTFT液晶で、ドライブモード(EV/HEV)を切り替えるとメーターも切り替わる。さらに「PM2.5緑浄」と呼ばれる、PM2.5対応の空気清浄機を装備するのは中国ならではだ。
ちなみにBYDは同社のテクノロジーを「542」と呼称し、フロントフェンダーに誇らしげに専用エンブレムを掲げている。「5」とは0-100km/h加速5秒以内(実際は4.9秒)、「4」とは四輪駆動、「2」とは100km走行するのに必要な燃料は2リットル(50km/リットル)を表す。EV走行可能距離は80km。V to V、V to L(ホーム)への給電も対応しているという。このスペックで、価格は30万元と、日本円にして510万円前後。中国人にとっても高級車の部類に入る。
EVモードとHEVモードの2つのモードがあり、それぞれにECOとSPORTが選択可能だ。まずはEVモードを選び、軽くアクセルを踏み込む。すると思った以上に車体が前に進み驚く。かなりアクセルが早開きするセッティングのようだ。アクセルを床まで踏むと、猛然と加速を開始する。ハリアークラスのボディサイズにもかかわらず、大きさを感じさせない身のこなしだ。EVモードのままだと途中で加速が頭打ちとなるが、HEVモード選択時には途中でエンジンが始動し、加速がもうひと伸びするイメージ。
コーナー手前でアクセルを戻すと、なかなか車速が落ちない。というか、まるでペダルがどこかに引っかかってしまって戻ってないくらいのイメージだ(思わず足もとを確認したが、そういうわけではなさそうだ)。ひと呼吸おいて減速が始まる。アクセルは全体的に早開きし過ぎ、遅閉じしすぎだ。ブレーキはかつての国産ハイブリッドカーのような「カックン」フィールで、慣れを要する。乗員スペース下にバッテリーを搭載し、重心はかなり下がっていると思うが、それでもコーナリングでは腰高な印象。サーキットを楽しむのではなくハイウェイで豪快な加速を楽しむ類いのクルマだ。
EV走行からエンジンがかかる際の猛々しさ、アクセルやブレーキのセッティングなど、全体的にはやや荒削りなクルマだ。「サプライヤーから部品を買ってきて、とりあえずプラグインハイブリッドカーを出しました」感は否めない。だが、その「俺たちだって自前のプラグインハイブリッドカーがほしい!」という気概は強く感じる。意あっても力足らず、というわけ。技術があっても気概を感じない日本車が失ってしまった大切なものを、唐4.9Sは持っていると思う。今後の進化が恐ろしい。